原作はレバノンからカナダのフランス語圏、ケベック州に移住した劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲。
ケベック州に住むアラブ系女子学生が、急死した母の遺言書を携え、中東に父と兄を探す旅に出る。
最後に明らかになるのは、理不尽かつ衝撃的な家族の事実。
映画の舞台のひとつが中東であるが、どの国かは明示されていない。
ただ、その国の内戦の背景にキリスト教徒とムスリム(イスラム教徒)の対立があることや、原作者の出身国から察するに、おそらくレバノンと思われる。
そのため、レバノン内戦について知識を得ておくと、作品の理解も進みやすいと思う。
レバノンは公用語はアラビア語であるが、キリスト教(マロン派)、ムスリム(スンニ派、シーア派)のほか、イスラム教の一派ドゥルーズ教、アルメニア正教など宗教的多様性を備えた国とされている。
第一次大戦後、フランスがレバノンの事実上の宗主国となり、その独立運動阻止を目的に恣意的な国境線を策定した。この国境線策定により宗教間の対立が激化し、各勢力の後ろ盾であることを標榜する外部勢力が軍事介入して引き起こされたのがレバノン内戦。内戦の根本原因はフランスの国境策定であるとされている。
カナダ、ケベック州(州都モントリオール)へのレバノン人移住者が多い理由について、参考文献はこちら:
『マロン派レバノン人のモントリオール移民』(横浜国立大学 長谷川秀樹先生)