
1年前に怪我をして要介護2になった母は、状態も良くなり要介護1に戻った。
けれど認知症は明らかに進んでいて、ある時突然思い出したようにトンチンカンなことを言って私を悲しみの底につき落とす。今回、どういうわけか母の記憶は30年も前に溯る・・・
それは毎朝、目が覚めて母と顔を合わす時から始まる・・・日に何度も。内容が内容だけに母の話しを始めて聞くかのように笑顔で受け流すゆとりはない。私は駄目だなと自分が嫌になる。
役で別の人間を演じている時と、映画を観ていると時と、本を読んでいるときは、すっかり現実を忘れる。泣いていた赤ん坊が何かのきっかけでぴたっと泣き止み、別のことに気をとられ笑いだすように私もきわめて単純で赤ん坊と変わらない。
今日の映画は木下恵介監督の「お嬢さん乾杯」
原節子さんの愛くるしいこと。
私が生まれる前の映画は、ロケーションも衣裳も、そしてセリフ回しも何もかもが新鮮で、映画に登場する多くの方々はもうこの世におらず、心の中で敬意を払いながらモノトーンの映画を体に染み込ませていく。母にも声を掛け一緒に観る。古い映画は母の情緒をも安定させるようだ。それを見て私もほっとする。映画にどれほど救われただろうか。