アッシェンバッハの彼岸から -104ページ目

何やってんだ三十女よ

(BGM:目をつぶっただけで空飛べるよ)
Keane
Hopes and Fears


先週、日経の夕刊を読んでておもわず声を上げてしまった。

「親と同居する30-40代女性 自立心磨き共倒れ防ごう」という記事。

なんとね、日本の30代女性の四人に1人が未婚であり、

そのうちの8割近くが親と同居なんだそうな。

それぞれにいろいろな事情があるだろうから他人のわたしには何とも言えないことであるが、

わたしは驚いたのは、親と同居する30代常勤女性が付きに家に入れるお金は、

平均32,000円。30代ともなりゃけっこうなお給料もらってるんでしょ?

32,000円って、ずいぶん安くないか?!

しかもね、びっくり仰天なのは、そのうちの3割もが、

なんと、


家に一銭も入れてないんだそうな!!


3割も!!!一銭も!!

おい!なにやってんだ三十路独身女たちよ!!


そりゃあね、中には、家にお金入れてない代わりに、

仕事もしながら家事全般を請け負わされてる女性もいるかもしれない。

家賃という形でお金は入れてないけど、両親や母親と、

毎月のようにちょっとした旅行なんかして、その費用を全額負担しているかもしれない。

両親のどちらかが身体が不自由で、そのお世話をしている人もあるかもしれない。


でも、でもね。

30代ともなりゃ、わたしもようなヤクザ者はともかく、普通に勤めてればそこそこのお給料を頂いているはず。

それで、家事も母親任せで家賃光熱費もナシで、

そんで一円も家に入れてない30代女性って、一体なにしていらっしゃるんでしょう。日ごろ。

たくさんのお給料、なにに使っていらっしゃるんでしょう。

ものすごいお金のかかる趣味があるとか?だとしたらそれって何だろう?

謎だ。単純に謎なのだ。


でもね、「毎日おなじでつまんない」とか、

「たまには非日常を味わいたいから遊びに行く」だとかって言葉を、

金に困ってなくて家事や子育てに追われていない大人の方々から聞くことが多い。

女性に限らずだが、そろいも揃って、つまんなそうな顔している。

他人の噂とテレビや雑誌に載ってる話をぐるぐるぐるぐる。

その人たちにいつも問いたい。

あなたがつまらないつまらないと言っている「日常生活」ってなに?

「あたりまえの毎日」ってなに?

日常っていうのは、日々の小さな、変わらぬ、それでも毎日欠かすことの出来ない、

膨大な行いの積み重ねによって、やっと成り立っているものなのだ。

それらのひとつでも、何かの事情で欠けたら、快適な日常はほんの少し非日常に傾くのだ。

毎日おなじことの繰り返しがあるからこそ、同じように見える毎日でも、

実は変化せぬものなど何もないという、時間の残酷さや有り難さに気付くことができるのだ。

こうしている間にも、このわたしのこの身体や心だって、刻一刻と変化をつづけている。

生活の小さな積み重ねを誰かに押し付けて「あたりまえ」だなんて考えているから、

小さな変化に気がつかなくなる。

だから、目に見える風景の裏側にある、物事の他の一面に目を凝らすことをしなくなる。

そうして日常生活はつまらぬものに堕してしまうのだ。

あたりまえ=つまらない、ではない。それがあたりまえであることこそ、本当にありがたく、仕合せなことなのだ。

だからわたしは、日常ほど、多くの刺激に満ちたものはない、と思うのだ。

それを忘れて、「なにか珍しいものを」「刺激がない・・・」などとボヤいてる人が大勢いる。

これはちょっとやそっとどころの不幸じゃないよ。


なんて熱弁ふるいながらキシダを見たら、

彼は黙ってわたしの頭の少し上あたりにボンヤリした視線を注いでいる。

「ちょっと聞いてる?!」

と言ったらハッとなった彼は答えた。


「いや・・・キミが話してるの見ながら、この人の頭のなかってどうなってんだろなって考えてたの。

えーとね、何だっけ近未来SFのカオス・・・『未来世紀ブラジル』じゃなくて・・・

あっ『ブレードランナー』だ。あの、超高層ビルがいっぱいそびえてて、

その合間を自動車だか飛行機みたいのが超高速でびゅんびゅん飛んでて、

チャイナタウンみたいなスラムがあるやつ。あれね、キミの頭のなかってちょうどそんな感じに見える」


そうか。わたしもこの男も、頭のなかが非日常なんだな。