その日はとっても疲れてたんだ
たくさんの人を見送って
神にでも祈りたい気分だった
オレたちだって神にいつだって会えるわけじゃない
だから
気まぐれで『教会』に来た
たまたま見かけた
小さな教会に
助けを
救いを求めに ―――
◆
最前列の席
真剣に祈りを捧げ
どれだけの時間がたっただろう
そっと目を開ければそこには
『どうぞ』
目の前にコップを持った『少年』が立っていた
―――!!!!???
慌てて後ろを振り返った
…誰も…いない…
そしておそるおそるもう一度『少年』を見た
『お水です どうぞ』
…オ…オレか…な?
『あ…ありがとう』
慌ててコップを受け取ろうとした
…でも
オレの手はコップを掴むことなく空を切った
あまりにも『少年』が普通すぎて忘れたんだ
オレが…
この世の人ではないってこと
チラリと少年を見れば今のことなんてどうってことない様子でニコニコと笑って立っている
『変な子』
それが第一印象だった
『ごめん そこに置いておいてくれる?あとでもらうよ』
そう言えば『少年』は嬉しそうに『はい』と返事をしてコップを置き
どこかへ行くと思ったその姿はこの場から離れず
更にオレのことを見つめてきた
あまりにも綺麗な目
逃れるように視線を外す
もう『見えてない』なんて思わなかった
『見えるわけない』なんて…
でも…
『天使さまですか?』
(―――えっ?)
『天使さま?』
『何言って…オレ…は…』
『きれいですね』
綺麗…
『オレが?』
そう聞いたら
『あなたが♪』って手を大きく広げて『ピカピカしてる~♪』ってジェスチャーしてきた
綺麗なんて言われ慣れてたつもりなのに
この子があまりにキラキラした目で見てくるもんだから
ちょっと照れてしまった
だから素直に
『ありがとう』って言えたんだ
(―――カーン カーン )
17時を告げる鐘が鳴る
『―――っ!!も!戻らなきゃ!!』
さっきまでの穏やかな口調とは異なった『少年』の慌てぶり
走って行こうとする小さな背中
あ…
『少年!忘れ物!!コップ!!』
『あ!!!ありがとうございます!天使さま!!』
むずがゆい名詞
『『天使』じゃないよ』
『??』
『『ジェジュン』って言うんだ』
どうして名前を教えてしまったんだろう
たった一度会っただけの『少年』に…
『ジェジュン♪』
名前を呼んで嬉しそうに笑ってくれた
それから
『僕は『ユノ』です!』
そう言ってコップをとり
(ガタン!)
音のする方を振り返りながら
また『ジェジュン』と呼んだ
首を傾げて見せれば『ユノ』という少年は
『ジェジュン また 会いに来て』
ってそっと呟いて 走って行ってしまった
オレの返事も聞かずに
とても優しい子だった
オレのことを綺麗だと言ってくれた
親切に水をくれた
『ユノ』
オレはコップが置かれてた場所を見つめた
『ユノ…お前なんで…震えてたんだ』
そこには置かれたときにはなかったはずの水滴の痕がいくつも出来ていた
ユノが立ち去る時
あのドアの向こうで音がしたときから感じた違和感
震える手の中握りしめられたコップ
『また会いに来て』と言われた言葉
ユノは――― 幸せなんだろうか