渡仏してから数年後の高校生時代、ハーフやこっち育ちの日本人などの友達が多かった時期の事。
ある日、「なぁなぁ、かな子(仮名)とよし子(仮名)って知ってるー?」と聞かれる。
「姉妹やねんけど」
「え、知らへんなぁ」
「え、二人は〇〇(私)の事知ってはるで」
「えー、なんかの間違いやろー」
なんのこっちゃと思うが、友達が知り合いである事を裏付ける情報を色々出してくる。
「二人とも日本の××にいはって、去年パリ来てんけど、△△で、※は〇で・・・」
(あれ~、確かにそれやったら知ってるはずやなぁ・・・誰やろ・・・)
そこからさらに少ししてから、またその姉妹の話題になる。
そこで、ハッとする。
「待って、それ、ソフィー(仮名)とジュリー(仮名)ちゃうの???」
「あ、そうそう、フランス名はそれやったかもー」
なるほどなるほど、そりゃ名前違ってたらすぐには分からへんわ。
と、納得すると同時に、若かった当時の私は少し衝撃だったのを覚えている。
私は、ハーフとして日本では日本人でありたかったし、フランスではフランス人でありたいと思って来ていてた。
そして幸いなことに、日本ではハーフである事で特別扱いされる事はあまりなかったし、フランスでも毎夏親戚と遊ぶ時、もちろん「日本の親戚」というレッテルはあったが、ただただ従兄妹と楽しく遊ぶだけの夏を過ごせていた。
でも、だから、わざわざ日本ではフランス名を使い、フランスで日本名を使う事の意味が分からなかった。
そんな事を大人になってからふと思い出し、ハーフ友達と話し合った時。
「まぁ、差別化やろ。個性出したいんやろ」
と言われる。
うーーーーーん。
そうなのかなぁ。
確かに、子供の私はとにかく目立ちたくなかったが、それは性格の問題ではある。
むしろ私を見て!と思う人は、マイナーな方の名前を好んで使うのだろうか。
もちろん、だからと言ってその姉妹が目立ちたがりな訳ではない。
親になんとなくそうしろと言われたのかもしれないし、あるいは日本が恋しいから?日本名を使う事にしたとか・・・色々、事情があるのかもしれない。
私や姉、旦那とその兄弟はハーフだが、皆「どっちの国でも通用する名前」だ。
だからか、当たり前のように、自分の子供にも「どっちの国でも~」な名前を付けた。
(二カ国ではなく言語も違う三カ国だったから少し苦労したが)
しかしハーフ仲間には、ファーストネームに住んでる国の名前、セカンドネームにもう片方の国の名前、な子も多かった。
そして幼かった自分は、どうしても自分基準で、名前が二つ、特に平等に使われてる(例えばお父さんにソフィーと呼ばれお母さんにはとも子と呼ばれるなど)子の心情がものすごく謎だった。
「名前が二つあるってどんな気持ちなんやろう。名前によって二重人格とかにならへんのかなぁ。」と余計な心配をしていた事を記憶している。
どっちかの方が自分らしいから、もう片方で呼ばれると馴染まないとかないのかと気になっていた。
でも、選べるって利点も、あるのか・・・・
そう言えば、昔こっちで日本名とフランス名があって、フランス名が大嫌いだと言う子がいた。
だからもちろんみんな日本の名前でしか呼んでいなかったのだが。
(確かフランス名がセカンドネームだったが、書類等にその名前が書いてあるだけで嫌な気分になっていたらしい)
その子がある分野で日本で活動するようになってから、いつの間にかセカンドネームのフランス名で名乗るようになっていたのを知った時、思わず意地悪に脳内でツッコミを入れてしまった。
いやいや、あんだけ嫌ってたやんと。
でも、歳取って自分の名前と仲直りしたのかもしれない。
あるいは、覚えられるようにこっちにしろと強く勧められたのかもしれない。
あるいは、単純に目立ちたいから・・・であっても、別にいいじゃないかとも思う。
理由は人それぞれやろう。
仕事で便利、とかもあるのかもしれない。
あと単純に好きな組み合わせとか。
(滝川クリステルなんて、フランスと日本のフルネームを昔見たが、「滝川」に「クリステル」なんて、そりゃかっこいいわなんて思ってる。)
でも、なるほど、選べる自由かぁ。
自分の子供達にはもう名前はひとつと決めてしまってるし、一切後悔していないし、
自分も旦那も名前はひとつで良かったと思っているが。
今は、幼かったころの自分に、「いや、人生何があるかわからへんし、選べるのも悪くないで!」と教えてあげたい。