イスラエルの風土:今のイスラエルとはどんな国なのか? | 52歳で実践アーリーリタイア

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52歳で早期退職し、自分の興味あることについて、過去に考えたことを現代に振り返って検証し、今思ったことを未来で検証するため、ここに書き留めています。

ユダヤのアシュケナジ系言語イディッシュ語を研究している社会言語学者、鴨志田聡子先生の現代イスラエルとユダヤ人に関する講義を受けたので、まとめがわりにここで整理。

 

なお、イスラエルは1948年建国時、そうはさせまいと近隣のアラブ諸国がよってたかって亡きものにしようと戦争仕掛けられましたが、イスラエルも負けじとエジプトのシナイ半島を一時占領するなど、生きるか死ぬかの領土争いが今現在も継続している地域。

 

そしてイスラエルによるパレスチナへの入植は、国際法的には明らかに違法で、パレスチナは自治政府がどんなに汚職が酷かろうと軍隊を持つ国家として成立させるべきだと個人的に思っていますが、以下、国際政治から離れて現代イスラエルの環境とイスラエル人の実態について整理したいと思います。

▪️イスラエルの自然環境

地中海世界に位置する、日本の四国の面積よりも若干小さいイスラエル(パレスチナ占領地を含むかどうかで変化)ですが、気候が大きく三つに分かれます。

 

下図を例に

*緑色系のエリア :地中海性気候(年間降水量400mm〜600mm)

*橙・黄色系のエリア:ステップ気候( 〃    250〜500mm)

*橙・赤色系のエリア:砂漠気候  ( 〃  〜250mm)

ちなみに東京の年間降水量は1,598mm(雨の少ない北海道北見市で同774mm

 

(reserch gate)

 

ベースとなっているのは地中海性気候だからイタリア・ギリシアなどと同様「冬は多少雨が降り、夏は雨がほとんど降らず乾燥」ということになります。したがってイスラエル人にとっての雨は「恵みの雨」だから、雨の歌はポジティブなものが多いらしい。

 

上の三つの気候のうち、過ごしやすいのは地中海性気候だから、富裕層は地中海性気候の街「テルアビブ」や「ハイファ」に多い。逆にエルサレムはステップ気候と地中海性気候の中間ぐらいで乾燥しているから昼暑く夜寒く、若干住みにくい。

▪️2大都市「エルサレム」と「テルアビブ」の比較

簡単にイスラエルの2大都市を区分すると、宗教的なイスラエルが「エルサレム」、世俗的(=近代的)なイスラエルが「テルアビブ」ということになります。

 

鴨志田先生の資料によると以下の通りで、世界の他の多くの地域と同様、イスラエルも金持ちは宗教に関心が薄く、貧乏人は宗教に関心が高い、という構図。

 

【エルサレム】

・一神教(ユダヤ教・キリスト教・イスラーム教)の聖地

・貧困層多く、宗教的な人が多い

・事実上の首都で官公庁が多い

・アラブ系が多い(アラブ系イスラエル人)

・人口密度が高い

 

【テルアビブ】

・国内最大の経済商業都市

・便利だが総じて物価が高い

・世俗的な富裕層が多い

・海岸線の街でリゾート的な雰囲気

▪️誰がユダヤ人なのか?

イスラエル建国後、ユダヤ人移民を受け入れるにあたって、ユダヤ人かどうか、はどうやって判別しているでしょう。

 

イスラエル政府的には、中世由来の伝統的なユダヤ人の定義と同じ定義を採用し、

⑴ユダヤ人のお母さんから生まれた子

⑵ユダヤ教を信仰している人

が、人種や民族に関わらず「ユダヤ人」と認定されるらしい。したがってユダヤ人のお父さんから生まれても、お母さんがユダヤ人でなければユダヤ人と認定されないのです。

 

ただし、建国前から1980年代にかけて移住してきたエチオピア人などは、追い出すわけにもいかず、ユダヤ教に改宗してもらって定住させたり、お母さんではなくお父さんがユダヤ人の旧ソ連からの移住者も特例法によって認めたらしい。

 

移住に関しては以下youtubeの動画「ここ100年のイスラエルへの移民」が面白い。

 

 

1989年ソ連崩壊後にいかにロシア(旧ソ連含む)からの移民が増えたか、がよくわかる動画で、鴨志田先生曰く、現地では実はロシア語が影の共通語になってると言ってもおかしくないくらいヘブライ語や英語に次いで普及しているらしい。

 

そういえば、旧ソ連のウクライナ大統領のゼレンスキーもユダヤ人でしたね。

▪️イスラエルの人口構成

これは意外だと思う人も多いのではないかと思いますが、イスラエル人はアラブ系(イスラーム教信者)が人口の2割を占めます。ユダヤ系7割、その他1割はキリスト教系など。イスラエル大使館公開の以下写真をも見ても他民族多文化国家なのが実感できます。

 

イスラエル大使館HPより)

 

ユダヤ系も歴史的に、主に東欧・ロシア含むキリスト文化圏から移住してきたアシュケナジ系と、イスラーム文化圏から移住してきたセファルディ系(一部はオランダ圏)に大きく分かれます(歴史的な経緯は以下参照)。その構成比は不明ですが、ユダヤ系イスラエル人750万人のうちロシア移民(=アシュケナジ系)が130万人を占めると言われる中、圧倒的にアシュケナジ系が多いように思われます。

 

 

 

 

ただ、歴史的にユダヤ人はキリスト教やイスラーム教に改宗した人も多く、どこまでいっても定義は曖昧なので、ざっくりと捉える必要があるとのことです。

 

聞くところによると、パレスチナ人は、大昔にイスラーム教に改宗したユダヤ人の末裔ではないか、ともいわれているぐらいですから。

▪️人口増大社会イスラエル

今のイスラエルの人口は約960万人で、どんどん増えています。というのも人口の70%を占めるユダヤ教徒の教えによるものではないか、と言われています。

 

ユダヤ教では以下の三つの理由で子供を「たくさん産まなければいけません」。

 

⑴聖書に「産めよ増やせよ」と書いてある

⑵ホロコーストで虐殺された人が多い

⑶ユダヤ系が民主主義政治で多数派を維持したい

 

実際ユダヤ人は子供人は普通で、人・人と産むのが当たり前な社会。子供が2人しかいないと、「まだまだですね」と言われるらしい。

 

実際イスラエルの特殊出生率は3.00人で先進国の中でもトップクラスの数値。ちなみにユダヤ系だけでなく人口の20%を占めるアラブ系も出生率が高い(2.92人)。

 

 

以上、イスラエルの現状について整理しましたが、引き続き次回は、現代ユダヤ人の現状について紹介したいと思います。