今回も井上尚弥の生観戦のチケット抽選はハズレ。
幸いにも友人のチケットが当たったので、いつもの3万円台のチケットを買って一緒に観戦させていただきました。
東京ドームは、やはり他の会場と違ってリングが遠くて選手が豆粒状態で、パンチの当たる音もよく聞こえませんでしたが、大観客ならではのものすごい音量に「やはり生観戦してよかった」と思える体験でした。
そして驚いたのは、リングアナウンスのジミー・レノン・ジュニア。昨日、WOWOWライブ配信を通して、でラスベガスでのカネロ・アルバレスvsハイム・ムンギア戦でアナウンスしていたから、さすがに東京ドームには来ないだろうと思ったら、びっくりやってきたのです。時間的に間に合うんですね。
リングアナウンスのもう一つの巨頭、マイケル・バッファーが79歳とすっかり老いてしまってメインイベントのアナウンスはしなくなってしまったので、重要な試合はほとんどがジミー・レノン・ジュニア。
さてメインイベントは、元BOØWYのギタリスト、布袋寅泰のギターソロとともに始まる。布袋のギターの叫びにすっかりアゲアゲになってしまったのか、普段の井上尚弥の入場とは違った派手なパフォーマンスに、思わず不安がよぎる。
そしてその不安は不幸にも当たってしまい、井上尚弥の1ラウンドでのネリのショートフックでダウン。
それでも10カウントいっぱい休むことでダメージを最小限にしつつ、クリンチして脳震盪からの回復を待つその危機管理テクニックをみせつけられると、未だ無敗の選手ならではです。
このあたりは、お父さんの真吾トレーナーとの緻密なトレーニングが効果発揮しているのかも。後日のWOWOW振り返りマッチで、その真相を本人にぜひ聞きたいところです。
そして、2ラウンド目からは、まさにいつもの井上尚弥に戻り、井上コンピュータが稼働して、ネリのパンチの軌道や伸び具合、スピード、そして距離感など、全てをデータにインプットしつつ、そのデータを踏まえたアウトプットの最適解を算出して以降は、完璧な試合運び。
3ラウンド以降は、ネリの戦いが手に取るように把握したとみえ、ノーガードで挑発するほどの余裕を見せる井上尚弥。
そしてフィニッシュに向けては、あえて4万人の観客を喜ばせるべく、徐々にダメージを与えつつドラマチックなKOで試合を終わらせる。
この真剣勝負の場でスペクタルな試合展開をあえて選択できる、という彼にしかできない芸当を披露。
これが井上尚弥、ですね。
さて他の世界線3試合について。
特にいい選手だな、と思ったのは、意外にもユーリ阿久井フライ級チャンピオン。教科書通りの美しいボクシングスタイルで、2年10ヶ月ぶりの桑原拓との再戦とのことでしたが、完全に試合をコントロールして完勝でした。
ちょっと残念だったのは井上拓真。直前の試合のパフォーマンスが良かっただけに気負ってしまったのかもしれません。本人もこの戦いぶりは当然不満であって「勝ったことだけがこの試合の収穫でした」みたいな試合後の発言。今後こんな試合をしていてはメインは張れないでしょう。
そしてマロニー戦に挑んだ、キックのチャンピオン、武居由樹ですが、実戦観た限りでは、まだまだの選手。テクニック的にはマロニーが圧倒しており、特に12ラウンドではホームアドヴァンテージで試合ストップされなかったのでは、と思ってしまうほどの追い込まれよう。
レフェリーは4万人の日本人に気を使ったのか、試合ストップせず、ちょっとマロニーには可哀そうな試合でした。
そんな感じで、東京ドーム観戦させていただきましたが、井上尚弥が手放したバンタム級の四つのベルトは、これですべて日本人が保持することに。
WBC:中谷潤人
WBA:井上拓真
IBF :西田凌佑
WBO:武居由樹
四人のチャンピオンを私がみる限り、中谷潤人が抜きん出ているのは、誰もが認めるところでしょう。
ただ、もしかしたらWBC中谷もIBF西田も井上尚弥と対戦したいでしょうから、階級上げて、井上尚弥の次戦の対戦相手サム・グッドマンの次あたりに挑戦してくるかもしれません。
一方の井上尚弥。実は1階級上のフェザー級チャンピオンは、好敵手揃い。変則系ノーガードのメキシカン、ルイス・アルベルト・ロペス、同じくメキシカンの高身長のラファエル・エスピノーサ、そしてカネロの前座で闘ったブランドン・フィゲロア(メキシコ系アメリカ人)、エスピノーサに負けてしまったけどテクニック抜群のキューバのロベイシー・ラミレスなどなど。
なので、井上尚弥がさらに強い相手と戦いなら、フェザー級に行く方が彼にとってモチベーションが上がるかもしれません。
どちらに転んでも、軽量級は世界中が井上尚弥を中心に回っていくことは間違いない。今後も井上尚弥に注目するしかありません。