グイン・サーガで有名な栗本薫(中島梓)の伝記。グイン・サーガ以外の活動はよく知りませんでしたが、とにかくエネルギーの赴くままにありとあらゆる芸術に手を染めていたんですね。やっていなかったのは絵画ですが、漫画という形で子供の頃に挑戦していたそうですが才能がないということで諦めたということであれば、その殆どに挑戦していたということ。とにかく私含めグイン・サーガの愛読者にとっては涙なしでは読み終われない、そして面白くて一気に読んでしまう、それはグイン・サーガと同じぐらいの面白さでした。
単行本の帯にも書いてある通り「物語に書かせられている筆記機械」。
私も高校時代から数十年栗本薫が亡くなるまで、グイン・サーガが発売されるのをいつも楽しみにしていたファンの一人でしたが、グイン・サーガの展開される「中原」含めた世界は、まさに私のもう一つの世界でした。
でも栗本薫は本書で指摘している通りの筆記機械なので、どんどん止めどもなく溢れ出るそのままにグイン・サーガを書き続けていくので、中には「もうその話いいんだけどな」という部分も結構ありました。
それでも1回観てしまうと辞められないテレビドラマのように、発売されればまた買ってしまう。
個人的には三国志のような国同士の攻防や、特に傑作の誉れ高い1巻から5巻までのグインのヒロイックファンタジードンズバな部分やオクタヴィアとマリウスの恋愛ものなどは大好きで、密かな私の心の灯火でした。
そんな栗本薫という人物自身、グイン・サーガを生むにふさわしい天才的かつパワフルなキャラクターだったんですね。でもいつ亡くなったかわからないくらい、マスメディアには無視されていたように感じます。
確かに質より量的な作家だったので、あまり文壇には評価されなかったかもしれませんが、グイン・サーガの世界を創造しただけでも、歴史に名を残したのではないかと思います。
さて、久し振りに栗本薫以降のグイン・サーガも試しに読んでみようかな