確かレフェルベソンスというフランス料理店もそんな印象を受けましたが、私は料理の美味さはこっちの方がお気に入りです。
日本のフランス料理店はどこもレベル高く、いつも大満足で店を出ることが多い中、記念日に利用するような高級フレンチの中でも、こと料理のみの評価をすれば、ここはトップクラスの美味さでした(評価を満点にしなかったのは、デザートがアルコール系で自分の好みでは無かったから)。
◎料理・味
コースが22,000円、27,000円のうち、22,000円を選択。金額の差は料理の技術ではなく、食材の値段の差だと思うので、基本初利用の場合は、安い方を選択します。これは和食の場合も同じ。
アルコール1杯、ミネラルウオーター(ガスなしガスあり複数の銘柄から選択可能)が無料で付いてくるのは、納得の構成。連れが赤白ワイングラス2杯ずつオーダーして、計56,000円でした。
料理にはそれぞれテーマがあって、使用している食材とともに卓上に配付されます。でも料理がピュアに美しく旨いので、シェフには恐縮ですが、あまり目がいかない。
様々な味や香りや歯に伝わる食感が見事に調和し、そして食べたことがない味、想像できない味で感動する。これがトップクラスの由縁。
それでも給仕の方とお話ししていると、なるほど「そんな思いを持った料理なんですね」と納得してしまう。その料理にこもった料理人の意図が頭の中をアルゴリズムのように流れていく。
「右脳(センス)で感動し、左脳(ロジック)で感動する」という具合です。
お土産の中にシェフ「Rionel Beccat(メッシではない)」氏の思いが書き綴られた1枚のペーパーが入っているのですが、翌日、このペーパーをみながらこのレビューを入力しているのですが、更に左脳が反応してしまう。
彼の生誕地コルシカ島(ナポレオンの生誕地ですね)やフランス本土のテロワール(地質・気候・植生などの環境)、そしてフランス人からみたら遠く極東にある島国の日本のテロワール、それがミックスした「第3のテロワール」というものを、料理の中に表現していきたい、という彼のスピリット(フランス人だからエスプリ?)は、確かに料理に見事に具現化されていた。
【儚さ】マッシュルームのきのこ特有の香りそのエキスの旨味、これにリンゴの酸味と雲丹独特の苦味が見事に調和したアミューズ。
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【交差点】冬の味、かぼちゃの甘みがいくらの旨味と塩っ気がアクセントになっているフラン。これに柑橘系の酸味が隠し味。
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【喩え】1枚1枚、アンディーブ(チコリ)を剥がしながら、トリュフの香りとともに味わう。
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【暖かさ】こんな白子の美味さもあるんですね。ポルチーニ茸を練りこんだソースにシャントレルというキノコが真鱈の白子特有のミルキーな味わいを引き立てる。
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【愉しみ】マナガツオ(鰹とは別物の魚)の調理は、しっとりとした白身とパリッとした皮が王道の仕上げ。意外にクルミと合わせて口の中に含むと新しい味覚の発見。カラスミを含んだ特製のソースだそうです。
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【獣性】エゾシカロース肉は、モミの木を隠し味にして、ブルーチーズのロックフォール風のソースと組み合わせている。エゾシカはモミの木に寄り添って腐ったリンゴを食べるという。腐ったリンゴの菌は、ロックフォールの菌と同じで、つまりこの料理は、蝦夷鹿のテロワールを表現したものなんですね。というか、エゾジカのストーリーはこの程度にして、それにしてもこの鹿肉のピュアな食感は、若干の獣性を有しつつも滑らかで歯ごたえありつつのマイルドな肉の旨味は絶品。
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ということで、このあとお口直し【原罪】にデザート【自由自在】が給仕され、最後にコーヒー&ミニャルディーズと続いていきます。
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デザートは、あっと驚く工夫がされていて、食べてみてのお楽しみ。私はデザートは甘みや酸味の際立ったノンアルコールのものが好きなので、あまり自分好みではありませんでしたが、料理のアイデアや、組み合わせの妙はクオリティーの高いものではありました。
ちなみに珈琲は、当然ながら特別仕様なのですが、本ビルの大家さんがドトールの創業者なので、コーヒー豆も特別仕様とのことでした。
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また、パンは自家製なんですが、天然酵母パンで、独特の酸味を抑えるためにしっかり生地を数日間、熟成させて焼くというこだわりのパン。これも別にロジックなしでも最高に美味なんですが、そんな裏話を聞くと、またここで「なるほどそんなわけで」となる訳です。
○サービス
若い方がメインなんですが、電話の応対も非常に丁寧で親しみやすい感じが印象的でした。接客自体もこのスタイルは踏襲されており、他のフランス料理店とはまた違った独特の接客。
つまり、カジュアルでフレンドリーながら、接客の基本としての給仕のタイミングや声掛けのタイミングの良さは、本格フレンチと同様。そして、伺えば見事な知識を持って、滑らかに的確にお答えしていただける素養もあり、シェフのコンセプトや想いもお客さんにちゃんと伝えることができる。
したがって、料理そのものに集中できる、そんな接客。
○雰囲気
他の方と同様の印象。本格グランメゾンっぽくない雰囲気。接客同様カジュアルな内装。ビルのほぼ最上階で、全面ガラス貼りですが、決して外の景色が綺麗なわけではない。
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聞けば来年(2019年)1月早々に2週間かけて内装のリニューアルをするそうです。
次回来た時はどんな内装になっているのか、実に楽しみ。
また暖かくなったら「夜と料理は同じで値段は抑えめ」というランチにまたお伺いしたいと思います。