仕事を見える化して、標準化し、データベース化して誰でもアクセスできる世界にしていく。
アナログからデジタルに変換することで、アナログを市場化(=値付け)し、取引もできるようにしていくというイメージ。
本当にそれでいいのだろうか?
なんでも効率化の観点でデジタル化していけば、利便性という視点では、プラスにつながるが、果たして利便性が人類の幸福に直結するかというと、そうでもないことも多い。
仕事が属人化していて、アナログの世界にとどまっている限りでは、自分の職場における「居場所(宮台氏はホームベースと呼んでいる)」が確保でき、固定化された人間関係もスムーズで居心地も良い。
しかしこれを、効率化の名の下に、仕事を見える化し、マニュアル化してデータベース化していけば、誰でもその仕事にアクセスしやすくなり、アナログ世界にとどまっている担当者の仕事は誰でもできる仕事化し、居場所がなくなる可能性が高くなり、不安な職場になってしまう。つまりメンタル的に非常に厳しい職場を生み出すことになる。そして実際にメンタルを壊す人が急増している。
まさにファーストフードとスローフードの関係とよく似ている。
非効率だが、生産者に安心感や幸福感を与えるスローフード。
効率的だが、生産者に単純労働を強いるファーストフード。
労働者に居場所を与えるアナログの世界。労働者から居場所を奪うデジタルの世界。
デジタル化を推進する職場に勤める自分としては、悩ましい問題である。そもそも仕事場に居場所を求めてはいけないかもしれないのかもしれない。そうやって納得するしかない。
私たちはどこから来て、どこへ行くのか (幻冬舎文庫)/宮台 真司
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