サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福ユヴァル・ノア・ハラリ著 読了 | 52歳で実践アーリーリタイア

52歳で実践アーリーリタイア

52歳で早期退職し、自分の興味あることについて、過去に考えたことを現代に振り返って検証し、今思ったことを未来で検証するため、ここに書き留めています。

ホモ・サピエンスに対する善悪の評価をすること自体、ナンセンスと思わざるを得ない。地球という存在に意識や意思があるわけでもなく、善悪の概念自体、著者自身が主張するホモ・サピエンスだけが獲得した認識革命の産物なのだから。また、著者の幸福の定義である、ビフォーアフターのギャップが幸不幸の源ということであれば、特に科学革命、産業革命以降、現代に至るまでは、進歩という形で常にギャップを編み出すシステムに切り替わったことにより、幸福を増大させてきたのではないだろうか。いうことで最後はハテナマーク満載ではあるものの、政治体制やイデオロギー、自由平等や資本主義の本質を宗教と同様のフィクションとして同列化し、相対化したことは、それぞれの主義主張の本質をついており、非常に説得力のある説だと思う。ジャレドダイヤモンド、マットリドレー、ダニエルEリーバーマンに興味のある方には、特におすすめというか、必読の本。
ユヴァル・ノア・ハラリという著者はイスラエル在住のユダヤ人.。ホモ・サピエンス、つまり「人間」に関するあらゆる研究から、その正体を時系列的に導きだすその手法は圧巻です。

「幸福とは何か」について、生物学的には「ビフォーアフターのギャップが幸福か不幸かの本質」というのがほぼ定説というのは、昔ビジネススクールでCSの講義を受けた時に、全く同じことを先生が言っていたのを想い出した。顧客の期待値が高いか低いかで、設定するサービスのレベルが決まる。つまり期待値を超えるレベルにしないと顧客は満足しない訳で、全く同じ考え方だ。

ブータンという国の幸福度が高い、というのが一時期話題になったが、これもブータン人のもともとの期待値が低い訳で、チョットしたことで幸福感を味わってしまう国民性がそうさせているというのも聞いたことがある。つまり、絶対値よりも相対値が人間の幸福感には重要ということだろう。

さて本書に関しては、私が勉強したかったことの「時系列」の部分の全てがここにあり、「やられたな」という感じですが、現代や未来の考察になると、急激にその主張に説得力がなくなってしまうのはなぜだろう。歴史は歴史として、現代や未来の考察はしない方が良かったかもしれない。