ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪「今野晴貴著」を読んで | 52歳で実践アーリーリタイア

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52歳で早期退職し、自分の興味あることについて、過去に考えたことを現代に振り返って検証し、今思ったことを未来で検証するため、ここに書き留めています。


2013/09/28朝生でブラック企業の特集されたので興味を持ち、電子版でダウンロードして読んでみました。ことこのような案件になると、感情論に流されがちですが、なぜ社会問題なのか、戦後の日本の雇用形態の特質まで踏み込んで、指摘している点に付いては好感が持てました。

一概にブラック企業を定義しにくい点がつらい所ですが、この世の中、検索エンジン使えば、具体的企業名含め、いくらでもホンネの情報が閲覧できる社会。いずれ指摘された企業は改善・退散を余儀なくされるとは思いますが、そんな企業で消費している自分も、不買行動で対処したいなという気分。でも特に日本人の生活必需品となった衣料品企業等の大手小売業については、生活に不便を感じてしまうかもしれない・それほど浸透してしまうと社会インフラになってしまっているので、大手スーパーや居酒屋など、他の競合もあきらめずに頑張ってほしいですね。


特に、興味深いのは、戦後の主に大企業の雇用形態について、被雇用者の権利(=雇用者の義務)が「終身雇用」「年功序列」だとすると、被雇用者の従うべき義務(=雇用者の権利)は「命令の権利」だという。

つまり日本型雇用においては、終身雇用と年功序列の引き換えに、雇用者が柔軟に命令を引き受けるという義務を負わされているということ。

具体的には、遠隔地赴任とその告知は1ヶ月前は当たり前。1週間前も決して珍しくない。しかも、これは違法ではない。上司の残業命令においても(サービス残業ではない)、一方的な命令であっても拒否することは困難。

長期雇用を前提とすれば、経済環境の変化に応じて、企業も雇用場所や職種なども、柔軟に対応していかないと生き残れない。つまりこの義務と責任の関係が日本型雇用の特徴だというのだ。

そしてこの契約においては、2000年代に入って法律で義務づけられるまで雇用契約がない場合が多かった。終身雇用であれば契約は不要ということだ。確かにこの考えは説得力がある。

濱口桂一郎氏「新しい労働社会(岩波新書)」によれば、この「企業の命令権」を「空白の石版」と呼んでいるらしい。

さてここで、ブラック企業は、日本型雇用の企業の権利「企業の命令権」のみを残し、「終身雇用」等の企業側の義務を前提としない人事制度になっており、「いいとこ取り」していると言うことだ。

一般的に有期雇用であれば、仕事内容や時間が明確に雇用契約で制限されるが、正規雇用社員の場合は、高処遇・雇用保障と引き換えに、勤務場所・勤務職種・残業時間などの被雇用者側の意思が反映しにくいと言うこと。

そして、完全な買い手市場となって久しい新卒採用の場では、企業サイドは、ある程度名の知れた大手であれば、大量に採用して人件費を安く抑え(時給制の有期雇用よりも安い)、厳しい労働環境に適応した少数の正規雇用社員を残し、あとは問題を起こさずに巧妙に大量に止めてもらうシステムを確立することが可能となったと言う訳だ。

だから、過去の企業は皆ブラックという一般的言説は的外れということ。