知的に何らかの問題を抱えているとかIQが平均に比して有意に低いとか、何かしらそうした生来の属性に対して投げかけられた言葉であるなら、「バカ」というのは確かにただの中傷でしかない。

 

しかしこの言葉は、必ずしも中傷の文脈だけで使われるとは限らないだろう?

 

 

 事故で脊髄を損傷して車いすで活動している、アイドルグループ仮面女子の猪狩ともか(33)が26日までにX(旧ツイッター)を更新。一部アーティストの高市早苗首相に対する「バカ」投稿に対し、苦言を呈した。 

 

 ロックバンドGEZANのフロントマン、マヒトゥ・ザ・ピーポーが22日、自身のXを更新し、高市氏のポストを添付しつつ「マジでシンプルになんでこんなバカが国のトップなの?センス磨いてやるからGEZANの武道館こいよ。前売りかいとくから」と投稿した。ちなみに添付した高市氏のポストには、高市氏が20カ国・地域首脳会議(G20サミット)出席を前に、「なめられない服」選びに長時間を費やしたことなどを記していた。 

 

 この、マヒトゥ・ザ・ピーポーが「なんでこんなバカが国のトップなの?」などと記した投稿について、女性自身のウェブ版が24日に「高市首相の“洋服選び”投稿に怒り爆発」などの見出しでネット記事としてアップ。女性自身の公式Xにも同日、記事のアドレスとともに、見出しの内容などをポストした。 

 

 猪狩は25日夜、この女性自身のポストを引用。「アーティストやタレントが政治的発言や意見をいうのはとても素晴らしいと思います。ですが『バカ』は意見ではなくただの中傷ではないでしょうか?」と私見を述べた。そして「私も意見を述べる際は言葉を選ぼうと自戒も込めて」と続けた。

 

普通に日本語の読解に必要な能力を想定する限り、マヒトゥ・ザ・ピーポーの言う「こんなバカ」が指す対象は、「高市」ではなく、「なめられない服選びに長時間を費やす高市」の方だろう。

 

従ってこれは「人」に対する中傷ではなく、その「行為」に対する批判と捉えることも充分過ぎるほどに可能だ。

 

せっかくだから一つ裏付けを与えよう。映画「フォレスト・ガンプ」で、ハンディキャップを背負い周囲からバカにされているフォレストが母親から教わったこの言葉だ。

 

Stupid is as stupid does. 「バカなことをする人が『バカ』です」

 

人はその行為によって「バカ」を露呈する。

愚かな行為が批判を浴びるのは当然であり、それが国家の未来を左右するような行いであれば尚更だろう。

 

「強そうに見せる」とか「なめられないようにする」とか、そんな「映え」主導で防衛が成り立つなどという浅はかさが原因で少なくない国民の経済活動に支障を来すような行為に至るのであれば、それはどう見ても「バカ」の意味するところに適合しているではないか。

 

「バカ」と言うのはただの中傷。

「首を斬る」と言ったら殺害予告。

「日本死ね」は反日分子。

 

こんな風に、言葉の「上っ面」だけ捉えてマジレスするってのは、俺に言わせりゃ極めて短絡な思考の賜物だと思うけどな。