あいかわらず不人気のマイナカードを国民にゴリ押しすべく、任意のはずのカードの所持を必須にするという悪知恵を働かし始めたようだ。
運転免許証やマイナンバーカードの券面の偽造は目視では見抜けないことから、店頭で携帯電話を契約する際は、現状行われている身分証の目視確認ではなく、マイナンバーカード等のICチップの読み取りが義務化される。
また、オンライン契約の際には、本人確認書類を原則としてマイナンバーカードに一本化し、顔写真のない健康保険証や運転免許証の画像を送信する方法は廃止されるという。
つい先月、スマホ乗っ取り(SIMハイジャック)事件の騒動に際し、わが国が誇る超アナログなデジタル大臣はご自慢の発信ツールXでこう言ってのけた。
《マイナンバーカードにはさまざまな偽造防止対策が施されており、しっかりそれらを確認いただければ券面の偽造は判別できます。例えば右上のマイナちゃんはパールインキで印刷されており、角度によって色が変化します。》
要は、「偽造防止策を施してあるので目視でも見抜けるぞ」と。しかし、これが同じ最強発信ツールX上で多くの批判の的となった。
《アナログで偽造カードを見分ける必要がある日本のデジタル》
《目視で確認するならICチップなんか必要ないだろう。偽造カードが出回っているのに、対策が目視か?終わってるだろう》
そのわずかひと月後に「読み取り義務化」を打ち出すわけだから、デジタル大臣としては言ったそばからの手のひら返しということになる。もちろん、マイナカードを目視で確認なんて最初からクソなアイデアだというのは間違いないのだが、そんなもん携帯の契約に限らずどんな場面でもそうなのだから、本来なら「マイナ目視」自体を法律で禁じるべきなのだ。
なのに今回、特段「携帯契約時に義務化」だけを掲げたというのはあからさまに恣意的であり、大方「マイナちゃんで判別・・・」を批判されたことに対して腹いせでやってることであって、決して問題の本質を突いたわけでないことは明らかだ。
それどころか、政府はこの決定によって大きな自己矛盾に見入ることになるだろう。
政府が打ち出しているマイナカードの利便性の一つに「コンビニでの公的証明書交付」というものがある。そもそも目視確認の信頼性に自らミソをつけたのなら、紙切れでしかない公的証明書なんかに何の価値があるのかも疑われて然りなハズだが、役所での対面交付であれコンビニでのプリントアウトであれ、公的証明書にはそれなりの偽造・複製防止対策が施されており、それが紙一枚の存在価値を支えている(ことになっている)。
例えばマイナカードによってコンビニで交付される住民票の紙面はこうだ。
・表 → 住民票記載 + けん制文字
・裏 → スクランブル画像 + 偽造検出用「潜像画像」 + けん制文字
けん制文字というのは、コピー機にかけて複製すると「複製 複製 複製・・・」のように文字が浮かび上がって表示されるものだ。これによって提示された紙が原本であることを判別できる。
また、裏面のスクランブル画像というのは表面の住民票記載内容を暗号化したドットパターン画像であり、この画像をスキャナーでスキャンして専用サイトで暗号解除すると、表面の住民票記載と同じ内容を得ることが出来る。これは「公開鍵暗号方式」という技術によるもので、専用サイトで暗号解除出来ること自体が「改ざん無し」の証明になるため、記載内容が偽造でないことを判別する手立てとなるわけだ。
さらに裏面にある偽造検出用「潜像画像」を、ある波長の赤外線カメラで撮影すると、直接目に見える画像とは異なる画像をモニターで確認することが出来る。これも生成困難な特殊インクでしか実現出来ないという意味で、この紙が偽造でないことを判別する指標となっている。
このように、ICチップを持たないただの紙切れであっても、さまざまな偽造・複製防止の対策を施すことにより目視+αの信頼性を確保出来ている(ことになっている)。その信頼性がICチップ(というより「利用者証明用電子証明書」だが)に比してどの程度なのかという論点はあれど、「マイナカード使ってコンビニで交付されること」が「利便性である」とうたわれる程度には無視出来ない証明能力を保有していると言って現時点では間違い無いだろう。でなければマイナカード所有の利点が大幅に減点されてしまうわけだからな。
ならば、だ。
「コンビニでプリントアウト」でも実現出来るようなこれらの対策を、どうして健康保険証など同じ「紙の証書」にも施さないのだろうか。それをせずに、
「公的証明書はチップ無し → 偽造防止対策有り → 証明能力有り」
「健康保険証はチップ無し → 偽造防止対策無し → 証明能力無し」
と言ってマイナカードを強制するのはおかしいだろう?保険証も公的証明書と同様の偽造防止対策を施せば良いだけの話だ。にもかかわらずそれをやらないのはまったくもって自己矛盾でしかなく、明らかに行政の不作為ではないか。
マイナカードをゴリ押しするために、マイナカードで取得出来る公的証明書には引き続き有効性を与え、マイナカード以外の本人確認書類は、不作為をもって失効させる。
つまるところ、「携帯契約にマイナカード必須」は不正防止目的ではなく、マイナカードを普及させたい政府が謀っただけの単なる悪知恵だということになる。しかも、恐らくこの改定のきっかけになったであろう携帯電話契約時の不正は「スマホ乗っ取り」、つまりSIMハイジャックであって新規契約ではない。「携帯を紛失した」という嘘から始まるSIMハイジャックだからこそ、紐づけされたアカウント(口座)が被害を被る構図だったのに、いつの間にか論点を「携帯電話を利用した特殊詐欺」にすり替えており、新規契約時の本人確認にもマイナカード必須を波及させるために、低能な政治部記者を使ってこんなたわごとをバラ撒いてまでいる。
「河野太郎デジタル大臣の発表によると、令和5年中に特殊詐欺に悪用された携帯電話回線のうち、契約時の本人確認書類が把握されている619回線の68%に当たる419回線で偽造カードが使われているそうです。
偽造の割合が最も高かったのが保険証で77%、次いで免許証が72%、在留カードが42%、マイナンバーカードが4%。こうしたことから、本人確認のためには、本人確認書類を目視で確認するのではなく、マイナンバーカードのICチップの読み取りが“一番確実な方法”だと政府は推し進めています」(全国紙政治部記者)
は?619回線の68%で419回線だと?
特殊詐欺に使われている携帯なんて、実際は「何万台」のレベルだろうが。
それに何だよ?「偽造の割合」って。
保険証で77%、免許証で72%って、どういう計算なんだよ。その百分率の母数はいったいどれなんだ?よくもこんな意味わからん数字出されてホイホイ記事に書くもんだな。
出所不明、真偽不明のこんな数字を使って「マイナカード必須」を正当化し、いかにも政府が国民を被害から守ろうとしているかのように見せかける。これはもはや国家的特殊詐欺である。
全国紙政治部記者とか言って、こいつはただ詐欺の片棒を担いでいるだけだ。