激戦となった第72期王将戦は、藤井王将の初防衛に終わった。羽生九段の通算100期目タイトル獲得はお預けとなってしまったが、古くからのファンにもまだまだ希望は捨てなくて良いぞと思わせてくれる戦いぶりだった。本当に驚きマンモスだ。
「AI(人工知能)が出て来て、将棋の手筋も変わってしまったが、50過ぎても最新形を指している。(野球で言えば)時速160キロで勝負しているようなもの。信じられない。将棋を極めたいとか将棋の勝ち負けを超越した何かがあるのでしょう」
豊川七段の言うとおり、50過ぎて二日制の対局をこなすだけでも相当な体力を要するのに、AIの示す最新の棋譜を深く研究するためにどれだけの時間を費やしたら、あれほどの速球を投げ込めるようになるのだろうか。今シリーズの対局を見る限り、羽生九段が「まだまだ知り足りない」と言って貪欲に研究に打ち込む姿が浮かぶ。もの凄い熱量だと思う。
棋王戦五番勝負では、藤井王将に連敗していた渡辺明棋王が1勝を返し、反攻に転じている。「棋王戦第4局を渡辺棋王が勝ったら、名人戦も面白くなる。王将戦第6局で羽生さんが勝ったら鼻血ブー高木ブーですよ」。大盤解説会の前日から、持ち前のおやじギャグは最高潮だ。
今回は残念ながら鼻血ブーとは行かなかったが、あの正確無比な人間コンピューターにひけをとらない程の戦いを見せてくれたのだから、「たいしたもんだよ蛙のションベン」である。タイトル100期のチャンスはまだまだいくらでもある。ここは「気にし給うなよ蝉のションベン」で、もうひと踏ん張りお願いしたいものだ。
中年の星よ、眩く輝き続けてくれ。