とにかく無事に手当てが終わったようで本当に良かった。だが、これが宮台の言論に対する直接的なテロ行為なのか?と考えると、どうも腑に落ちない。

 

 

「安倍さん、ラシュディさんへの襲撃もそうだが、言論をものする人が襲われるというのは、背景や動機が不明な場合でさえ自由に対する一定の抑圧となる」 

 

確かにそれはその通りだ。ただ、宮台の存在がその言論を封殺せねばならぬほどに疎ましいと考える人間の立場というのは、果たしてどのようなものだろうか。彼は政治家でもなければ扇動家でもない。舌鋒鋭いのは確かだが、それによって利害が及ぶほどの「政敵」がこれほどのリスクを冒すまで窮地に追いやられているという状況はとても想像しがたい。

 

また、普段彼は個人としては他の人間と極めて穏やかに付き合えるタイプの人だ。日々の生活の中で極端に恨みを買うようなことが有るというのも非常に考えにくい。

 

一方で、彼は大学教授である。学生に対して知見とともに評価を授ける立場だ。利害関係が際立つとしたら大学という仕組み自体がその世界の中にある。犯行現場がキャンパスだったというのも大いに気になるところだ。

 

犯人は生協付近から北東へ逃げたという。正門のある南大沢方面を避けて北東の、おそらく「中門」を使って外の道路へ出たと考えると、事前に位置関係を周到に調べていたか、もしくは日常的に土地勘を得ていたかだろう。

 

警察には宮台が著名な論客だからといって先入観に捕らわれずに、犯人像を幅広く想定して捜査に取り組んでほしい。大学の敷地内で行われた犯行だから、尚更早期に解決に漕ぎつけて貰えればと切に願う。イマドキの開かれた大学だけに、こうした不意打ちの犯行は極めて防ぎ難く、禍根を残すことになると思われる。学生たちの心理にも相当にケアが必要だろう。