正直パンケーキなんてどうでもいいのだが、もともとこの手の番組の存在自体がおかしいと思っていところなので少し書いてみる。
「合格の基準について、ロイホと審査員が考えているものにかい離があったのだと思います。ロイホの方は、500円以下の値段で利益を上げることが基準なので、シンプルでオールドファッションなパンケーキを出しているのでしょう。ですから、基本を守ることが大事になります。一方、審査員は、お店をやっていますので、創意工夫して付加価値を高めた料理が基準になります。フランス料理では、クレープのようにフルーツを乗せたりして華やかにしたガレットというものがあります。そのような料理を審査員は期待したのだと思います」
いや、決してそういう事じゃないだろう。そもそも論として同業者が同業者を採点しようとしている時点でおかしいのだよ。
彼らの中で明らかに異なるのはターゲットにする相手であり、それは消費者なんだ。そんな彼らを採点出来るのは「消費者だけ」なはずだろう?何故、違う相手に対して商売している者同士が互いに採点し合えるんだ?
この番組で採点側に回っているシェフは皆、何だか知らんがとにかく「一流」らしい。
しかし、その一流という「採点」も消費者によって行われたものであって、決して同業者によるものでは無いだろう。彼らは共に消費者から「採点される」立場であり、それは未来永劫変わらない。いつまで経っても同業者を採点する立場になどなり得ないはずなんだ。
そんな者たちに採点をさせようという企画自体がおかしい。消費行動の原理を司るのは消費者であって生産者では無いのだ。にもかかわらず、一部の生産者だけを持ち上げて神のように有り難がるのは、完全に権威主義的価値観である。だからこういう番組がもてはやされるのは、世の中で民主主義的思考が劣化している証拠なのだろうとも感じる。
実際、同様の権威主義的価値観は至るところで見られる。以前から特に目につくのはお笑いの世界だ。お笑いの芸を見て笑うのは客であって同業者では無い。なのに有名なお笑いコンテストの企画では、ずらりと並んだベテラン芸人が最も比重の高い採点を行う。つまり、ここで重視されるのは客へのウケではなくベテランの権威なのだ。
数年前、決勝に残った「ぺこぱ」のステージを見て絶対に優勝だと確信したが、残念ながら優勝できなかった。しかし今現在、テレビで幅広く活躍出来ているのはその時の優勝者では無く、ぺこぱの方である。結局、世の中は民主的消費原理に支配されているというのに、どういう了見であんなに権威をもてはやすのかさっぱりわからない。