現ポーランドのオシフィエンチム(アウシュビッツ)の収容所に隣接していたルドルフ・ヘス収容所長の邸宅が1月27日に一般公開された。かの焼却炉が見えるこの家を主舞台にヘス家の日常系を描いた映画「関心領域」が2024年にカンヌのグランプリ受賞など大いなる評判を呼んだ。
邸宅は解放後にポーランド人の所有物となり閉鎖されていたが、米国のNPO対過激主義プロジェクト(ハンス・ヤコブ・シンドラー所長)が2024年に邸宅を買い取り、隣の収容所と同じく負の遺産として後世に繰り返させないため一般公開を企画。ソ連軍の解放記念日に合わせて公開を始めた。邸宅の一部は今後、本格的にミュージアム化される。
妻ヘートヴィヒおよび5人の子供とレギヌオフ88番地の邸宅で暮らしていたヘスは、ソ連軍によるアウシュビッツとビルケナウ解放を逃れるも逮捕され、ポーランドで裁判を受け、邸宅と収容所の境目で処刑された。
ユダヤ人や「ドイツ人らしさ」から離れた者を虐殺したホロコーストの仕立て人が意外にも小人物だったというイメージは、イスラエルでのアドルフ・アイヒマン裁判によって生み出された。ヘスもまたジョナサン・グレイザー監督の映画によってそのような人物だったというイメージが定着しつつある。その人物像はヘス自身が裁判のためにつけた回顧録から造形されている。