遺伝子にみるイースター島文明非崩壊説 | 歴史ニュース総合案内

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 チリのラパヌイ島(イースター島)で欧州人渡来前に人口が劇的に減少していないことを示す研究が、9月11日付で英国誌ネイチャーに掲載された。島民の遺伝子の持つ多様性が失われていなかったので、文明は崩壊しなかったという。

 コペンハーゲン大学のビクトル・モレノ・マヤール助教授らのグループは、フランス国立自然史博物館が所蔵する1670~1950年の島民15名の歯や遺骨のゲノムを調査。西洋人渡来前のゲノム情報に多様性があり、一時的に島民人口が激減していたら起きる遺伝子の画一化が起きていないのを確認した。モアイ像に象徴される文明が自然環境の変化で崩壊(エコサイド)したと囁かれる13~18世紀には逆に人口が増えているのを示す結果が出た。

 

 南米大陸から3700kmほど隔たったラパヌイの伝承によれば、まず長耳族(エエベ)がやってきて、遥か後に短耳族(モモコ)がやってきて、両者で17世紀頃に争いが起き、相手のモアイ像を引き倒しあったため、島は衰退した。欧州人渡来前に起きたこの「フリ・モアイ」の原因が島の資源の枯渇によるものと看做された。だが、島の環境破壊説は国際社会が温暖化問題にやかましくなった時に台頭してきたもので、フリ・モアイは島民が全滅するレベルではなかったことになる。真に崩壊したのは1860年代にペルーの奴隷貿易船が襲撃して、100人代まで人口が減った時だ。