休館で盛り上がる文豪集う山の上ホテル | 歴史ニュース総合案内

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発掘も歴史政治も歴史作品も

 東京駿河台の山の上ホテルが2月13日からの長期休業を前に文豪が缶詰めで執筆したホテルとして盛り上がりをみせた(関連直営店は営業継続)。神田や神保町を見下ろす「ヒルトップ・ホテル」では、池波正太郎や川端康成、三島由紀夫らが主に定宿としていた。

 ウィリアム・メレル・ヴォーリズが石炭商・佐藤慶太郎のために1937年にアールデコ様式で御茶ノ水駅の近くに建てた研修所「佐藤新興生活館」として竣工。GHQの陸軍婦人部隊(WAC)たちの宿泊所になった後、吉田俊男が1954年にホテル化。屋上の夜間照明を自慢とし、立地から作家が愛用した。三島由紀夫は「ここが有名になりすぎたり、はやりすぎたりしませんように」と記したが、ホテル側は403号室を愛用した池波正太郎に特段の敬意を払い、描いてもらった絵をロビー等に飾っている。1室も同じものはない35の客室は、和室、洋室、折衷と多様な形式を用意した。一般客ももちろん宿泊できた。

 文豪による作品としては常盤新平が2007年に歴史語り『山の上ホテル物語』を執筆。近年でも又吉直樹や伊集院静が愛用しており、内部を2019年に竣工時の姿へ改装し、美術番組「新・美の巨人たち」でも紹介されたところだったが、建物本体の老朽化を理由に長期休業することとなった。