震災を受ける能登の遺産 | 歴史ニュース総合案内

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 能登半島の珠洲市を震源に1月1日に起きた震度7の地震により、多数の人命と共に能登の文化遺産と伝統文化が絶大な被害を受けた。朝市や漆器が全国区の輪島市の中心部で起きた大火災は、震災被害の象徴として大々的に報道された。

 漆芸を飾る石川県輪島漆芸美術館は臨時休館でも、朝市の火災からは免れられた。一方、朝市に近いイナチュウ美術館は閉館後の廃墟状態がもっと廃墟になり、漫画家の永井豪記念館は全焼したが、展示品に火は及ばなかった。漆芸美術館で現代の陶工たちが2022年に造った直径1mの輪島塗地球儀を復興の象徴にしようという動きがあるが、珪藻土使用で熱に強い輪島塗の流通体制が、これまでの過疎化と今後見込まれる人口流出で致命傷を受けるのではと懸念されている。

 

 曹洞宗の歴史的な普及拠点となった輪島市門前町の総持寺祖院では、山門からの回廊が全壊するなど致命的な被害を受けた。越前の永平寺よりも歴史的には重要というこの寺院は、2007年の能登半島地震からの再建工事が2021年にようやく完了したばかりだったため、耐震工事の実態が問われている。

 

 縄文時代以来の遺跡である能登町の真脇遺跡では、2017年に再現された竪穴式住居「縄文小屋」(高さ3.5m)が地震に耐えた。現代の知恵を借りていても、石斧など当時の道具を使って「縄文大工」の雨宮国広が建てたもので、柱を組むほぞ穴が地震の揺れを軽減するという。