再利用される中銀カプセル | 歴史ニュース総合案内

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 故・黒川紀章がメタボリズムの考えで銀座に建てるも十分に活用されずに解体された中銀(なかぎん)カプセルタワービルの部屋カプセルを引き取って再利用する動きがある。現役の建物としては不便でも、建築史上の価値は高いだろう。

 中銀カプセルタワービルの部屋カプセルは140個あり、いつでも取り換えられるよう設計されたが、実際にはカプセルが交代することなく閉鎖され、2022年に解体された。しかし、カプセル23個が後世のために保存再生プロジェクトで救出された。うち1972年の建設時点に復元して展示するのが14室、改造可能なスケルトンタイプが9室あり、戦後建築の傑作に対して引き取り先が現れている。

 

 和歌山県立近代美術館は8月24日にカプセルA908を寄託された。黒川が1994年に建てた美術館で実際に使われた部屋として初めて展示された(埼玉県立近代美術館にモデルルームがある)。和歌山県立近代美術館はA908の所蔵を目指している。部屋といってもそれほど大きくない。

 淀川製鋼所は1室をトレーラーカプセルに加工。内装を竣工時に復元しつつ、軽量化してトラックで移動する「動く中銀カプセル」に仕立て、意匠ブランド「ヨドコウプラス」の象徴とした。自由に移動しながら働くという黒川のホモ・モーベンスの思想に適うと主張している。

 松竹は銀座の隣の築地でカプセル2室を転用して文化施設「シャトル」を10月に開業。日本文化を担う空間にする計画だ。

 カザフスタンの首都ヌルスルタン(アスタナ)を設計したりした国際的建築家だけに、海外も関心を示す。米国のサンフランシスコ近代美術館が買い取りを発表した。