「映像の世紀」独ソ戦回でミス | 歴史ニュース総合案内

歴史ニュース総合案内

発掘も歴史政治も歴史作品も

 NHKは5月22日に放送された「映像の世紀」で映像資料の扱いに誤りがあったと発表した。本物の戦闘場面に演習の場面が用いられたりしており、6月11日の再放送時に問題場面を修正した。

 第二次大戦を描いた「独ソ戦 地獄の戦場」では、スターリン元帥が「ドイツ人は人間ではない。一人でも多くのドイツ人を殺せ!」と発言するが、これは別人のものだった。開戦時にスターリンが別荘に籠り切っていたというエピソードを後世の伝承とする別の研究に合わせて削り、演習だった場面にはその旨のテロップをつけ、戦後の西ドイツとの国交修正時期も訂正した。反ナチの大義名分でウクライナを攻撃するプーチン大統領の演説にも修正を加えた。

 

 サミット閉幕の翌日に放送され、時事要素の強い同回では、ソ連側の映像が主に使われた。ナチスが駐留していた街で住民を殺し尽くし焼き尽くす残虐な戦争を展開したのと同等に、ソ連側もまたスターリンが事前に大粛清を進めていたことや、スターリングラード戦で士気の低い味方を殺して回る督戦部隊などに触れ、双方の残酷行為に力点を置いた。時事要素になるウクライナ問題については末期のドネツクでドイツ軍が撤退間際に敵の進軍を遅らせるべく街を破壊しつくす映像に留めた(ウクライナ民族主義の怪しき英雄ステファン・バンデラなどは出なかった)。最後にはソ連軍の方がドイツ軍よりも遥かに多くの犠牲者を出していた。

 おおかた独ソ戦の通説に沿った内容だった。週単位で番組をつくるとなると、基本事実は通説に従うようになるようだ。

 

 この戦争の岩波新書で2019年に著名になった大木毅(赤城毅)は、番組(「映像の世紀」の他の回は観てないと記述)の内容について不満をツイート。参照文献として相当な影響を企画段階からスタッフに与えたかは兎も角、当該書ではソ連軍の用兵がそれでも合理主義だったと記述している。