アジア史の新人物伝シリーズ | 歴史ニュース総合案内

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 アジア史上の人物列伝を主題に、集英社が大型シリーズ「アジア人物史」の刊行を12月1日に始めた。全12巻構成で、2024年4月まで刊行される研究系としては読みやすい偉人評伝だ。

 鎮西学院大学(長崎県諫早市)の学長に迎えられた姜尚中を総監修人に、10名が各地域の列伝を編集。最初に刊行されたのは7巻「近世の帝国の繁栄とヨーロッパ」と8巻「アジアのかたちの完成」。地域別の編成で、日本もアジア史の一部として大きく登場する。

 大きく取り上げたい主役の人物には何ページも使って時代背景とともに論じ、脇役は数ページに留める。主役は必ずしも学者以外の誰もが知る人物とは限らず、例えば琉球の羽地朝秀や朝鮮通信使との折衝に努めた雨森芳洲が挙げられている。監修人ゆえか妙に熱が入っている朝鮮史の領域はその傾向が特に顕著で、東南アジアや南アジア、中央アジアとなるとこれまで単著の伝記が書かれたことがないだろう人物が並ぶ。日本史は成田龍一、朝鮮史は李成市が担当している。

 紀元前は1巻「神話世界と古代帝国」に収まり、4巻で1000年代へ。8巻の終盤から近代に入り、11巻で第二次大戦まで終わる中世と近代に厚い編成。どの巻でも戦争を含む「交流」に基盤を置いている。地域別では中国と日本に並ぶか超えるくらい朝鮮・韓国の扱いが大きい。