韓国文学の流れ | 歴史ニュース総合案内

歴史ニュース総合案内

発掘も歴史政治も歴史作品も

 韓国発の文学作品がK文学の名の下で翻訳される機会が増えている。主に刊行されるのは女性文学だが、韓国の文学業界はどのような歴史を歩んできたのだろうか。

 

 パンソリや昔話、中華の翻案といった民間伝承とは異なる韓国の近代文学史は日本の植民地時代に始まる。李光洙の『無情』が内面描写を伴った最初の近代小説と位置付けられている。しかし、李は大日本帝国に度を越えて協力した親日派として処断されている。李の業績を否定していくと、「韓国には近代文学が無い」というテーゼが存在している。

 実際には、日本の名門大学に学んだ文学者によって沢山の小説や詩文が執筆されてきた。金史良の『光の中に』は1940年に芥川賞候補となり、早稲田に学んだ黄順元は「ソナギ」などの作品を著し、光復後も広く読まれた。同志社で捕えられて獄死した尹東柱の詩文『空と風と星と詩』は韓国で広く読まれている。李箕永『故郷』のようなプロレタリア文学もあった。しかしながら、日本の近代文学史で誰もが知る朝鮮人作家は一人としておらず、朝鮮を舞台とする作品で全国民的知名度を持つものは一作として存在しない(台湾も同じようなものだが)。

 光復後は南北分断により双方で思想上の分断が起きた。韓国の場合、北朝鮮に向かった越北作家の作品は禁じられ、社会主義的色彩を持つと認定された作品は激しく禁圧された。社会主義リアリズムしか許さないもう片方はいうまでもない。

 それでも作品は書き継がれていった。朴景利は植民地期を大河小説『土地』にまとめ、趙廷来は朝鮮戦争の思想闘争の悲惨さを『太白山脈』に描き、孫昌渉は私小説的にヘタレな韓国男子を『生活的』などで描いた。反軍政闘争には金芝河や高銀といった詩人が積極的に参与した。

 

 軍事政権が終わると、済州島4・3事件を描いた玄基栄『順伊おばさん』など多くの禁忌が無くなった。一方、男性作家による政治の関わる大きな物語から女性作家による民衆文学へと韓国でも風潮が変わっていった。申京淑『離れ部屋』が女性の向き合う社会問題を描いた転機だという。一方、北朝鮮から戻ってきた蓮池薫が翻訳した金薫『孤将』(李舜臣将軍)のような男たちの歴史小説は、影が薄れていった。

 国際化を謳っていても韓国内では、デジタル化の進行や日本文学の解禁で韓国の小説界が尻すぼみになる中、出版業界はソフト化していった。チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』に象徴される女性文学が中心となる光景が日常化している。孔枝泳『トガニ』のような社会問題からハン・ガン『菜食主義者』への私空間の問題への変容も置き、政治意識の高い韓国人というイメージは、経済発展と共に過去のものになろうとしている。