中欧に2年分のノーベル文学賞 | 歴史ニュース総合案内

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 ノーベル文学賞を司るスウェーデン・アカデミーは10月10日、ポーランドのオルガ・トカルチュクとオーストリアのペーター・ハントケに文学賞を授与すると発表した。選考員関係者の性暴力問題で2018年の受賞発表が見送られた後に、中欧の文学者が2人選ばれた。

 トカルチュクは歴史紀行に範を求める作家。代表作の『逃亡派』では、116の旅の中にショパンの姉ルドヴィガがパリから故郷に弟の心臓を持ち帰る「ショパンの心臓」など歴史に題材をとった作品が結構な数並ぶ。もう一つ翻訳されている『昼の家、夜の家』は、チェコ国境の町を舞台にした111の物語だ。

 ハントケは親セルビアの立場で行動した映画にも進出する文学者。代表作は1969年に発表された戯曲「観客罵倒」で、観客を直接の相手とする純粋言語劇として、ドイツ語文学を大いに代弁した。東欧方面ではスロベニアに母のルーツを求める自伝的小説『反復』がある。

 

 ノーベル文学賞はスキャンダル前、作家というより記者のスベトラーナ・アレクシェーヴィッチや音楽家のボブ・ディランに賞を与えたりして、小説に非ずと批判された(とはいっても、初期のノーベル文学賞は小説限定でなかった)。今回は文壇路線になったが、ハントケ受賞のように政治論争を回避した訳ではなく、文学に限った訳でもない。