原爆の川の屋形船訴訟 | 歴史ニュース総合案内

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 広島の原爆ドームの近くで屋形船「カキ船」を営業するのは、鎮魂の場に相応しくないという訴訟があり、9月19日広島地裁で敗訴した。被爆者団体は原告としての適格性を認められなかったが、平和記念公園の狭義の範囲内に屋形船の発着場が移転してきたため、問題となった。

 「カキ船」とは、広島名物の牡蠣料理を食べられる高級屋形船。カキ船は昭和初期には盛んだったが、現在の広島では「かき船かなわ」が運営している。平和記念公園の縄張りの南限である平和大橋の少し南で営業していたが、元安川の洪水の影響を受けにくい場所を求めて、平和記念公園のレストハウスの岸辺に移転することを決め、「カキ船は広島の文化」として国土交通省や県の承認を得た。元安橋と平和大橋に挟まれた場所だ。

 しかし、そこが明らかに原爆慰霊区域の縄張りに入っているため、社会民主党の金子哲夫元衆院議員らが営業許可の取り消しを求めて提訴。原爆ドームを世界文化遺産に認定したイコモス国内委員会も2015年1月、バッファーゾーンへの移転計画に懸念を表明した。

 

 物産館の廃墟だった原爆ドームの路面電車の向かい側には広島市民球場があったし、東側は広島の中心繁華街だ。だが、営業区域はそことは異なり鎮魂場の一部で、国際観光日本レストラン協会に加盟して折り鶴で配慮しても、かなわは屋形船に見えず、富裕層の空間なのであった。