「文化とは……世界の最終世界遺産だっ!!」
 相も変わらず恭介は突然意味も分からん事を言っていた。
 現在昼休みな訳で、いつもの五人で昼食をとっていた。
 真田は購買のコロッケパンを。沙耶と鈴は自分で作った弁当を。瑞希はおにぎりを食べ、恭介は……。
「だから! ご飯分けてください……」
「ちょっと待て、何故それを言うために文化は最終世界遺産とか何とか言ったんだ?」
 真田は率直な疑問をぶつけてみた。その質問には他の四人も頷く。

「いや、ただ言ってみただけ」

 ずてっ! 思わずその場でひっくり返ってしまった。
 ──だってモロに真顔で言うんだもの。
「ご飯分けてくれって言うだけでしょ? いちいちそんな意味も分からないような事言わなくても良いじゃない」
「いや、意味はある!」
「言ってみただけなのにですか?」
「誰がそんな事を言ったっていうんだ!?」
「お前だ」
 いつものようにこほん、と咳払いをして話を進める。
「たしかに突然過ぎて意味が分からないのも分かる。だから俺が説明してやろう!」
「そりゃ……当然だよね……?」
「いいか! 文化は俺達に取って限りなく大事な物なんだ!! 文化が無ければ……漫画はないしアニメは無いしドラマも無ければ歌も無くニュースもバラエティ番組も映画も言葉も何もかもが存在しないんだぞ!?」
「いや、まあ」
「って言う事はだなぁ!? 文化こそ、俺達人間の最終世界遺産なんだっ!!」
「あれ? 何故か最後だけ理解出来ん……なんでそこでそうなるんだ?」
 わかってねぇなあ。とバカにしたような目で、
「つまり、文化ってもんが無けりゃ俺達の今の生活は完全に無いってことだ。ということは文化ってのは偉大だろ? すげぇだろ? だからだよ」
「言わんとしている事は半分は分かるけど、半分は分からないわね……」
「沙耶、面倒だから良い。──はいはい良かったでちゅねー。そうでちゅねー。文化は俺達にとって神様みたいな物でちゅねー」
「だろ!?」
 ふと沙耶達は思った。
 こんな言い方でしかもバカにしたような声でこんな事言われて納得している恭介はかなりの大バカだと。もう救い様が無いと。
 で、本題に戻った。
「で、何でご飯を分けてくれってんだ?」
「さっき早弁してもうねぇんだよ」
「分かった」
「本当か!?」
「諦めろ」
「何ぃっ!?」
「お前なぁ、早弁したから弁当がありません。だからご飯を分けてください、なんてのが通るとでも思ってのか? そんなの現実は甘くねぇっつうの」
「友達だろ!?」
「最近ではそう思う事すら恥と化して来たのは残念ながら事実だ」
「ふざけんな! あのときの約束を忘れたのかよ!?」
「悪いな、交わしても居ない約束なんて覚えてねぇ」
「くっそぉ……お前が、俺達を裏切るなんて……」
「裏切った覚えは無いんだけど……」
 キリがなかった。真田は仕方なく恭介に少しだけ分けてやる事に。袋から卵サンドを一つ取り出し、「ほらよ」っと渡した。
「サンキュー真田ぁっ!」
「うぜえからあっち行ってろ……」











 第五話「リアル人生ゲーム? (後編)」


 真田は今更数えるのも面倒になった何十何百回目かの溜息を深々と、かーなーり深々とついた。
 極道コース、とてつもなく恐ろしいと言えよう。
 お金が入るマスはなんと二十五マスに一つ。しかも周りに比べたら微々たる物だ。何万と毎回取られるくせに入ってくるのはいつも十万前後。借金の十分の一にすらならない。
 現在の借金は人生ゲームの借金の紙の三分の二。返す気力すら起こらない。
 ちなみに職業コースに行った恭介と鈴は、同じ出世のマスに止まり(人生ゲームのような絶対止まってランクが上がるみたいなのは無い)、店長にまで上りつめた。
 バイトから店長って、全然リアルっぽくないような気がするのは気のせいだろうか。
 ビジネスコースに行った沙耶は、序盤こそ就活に失敗して交通費がどうとか、職が決まらず家賃が払えない。大家さんの手伝いをして三回休みとか、ようやく決まった仕事を早々にクビになり途方にくれ、数少ない金でやけ酒する。三万払うとかで借金んがいくらあった物の、途中からかなり儲かって来て、今や大金持ちだ。
 独身コースの瑞希は、精神的ダメージをいくらか受けながらも地道にこつこつと金が貯まって行き、今ではトップだ。
 真田はまたもう一つため息をつく。
「オイ、真田よぉ。お前遊んでる時にそんな何回も何回も溜息されたらテンシション超下がるんだけどー」
「極道コースなんかの所為だろうがっ!」
「お前なぁ、コースの所為なんかにしてんじゃねぇ。結局はお前の運がなかっただけだろ? それをゲームの所為にして現状が変わるか? 変わんねぇだろうが。だったらなぁ、今からでも努力してだなぁ──」
「いくら努力したってこれは覆し様がねェだろうが!! 見ろ! この借金の束を!!」
 これが借金じゃなかったら確実に一位だったであろうそれを恭介の目の前に出す。
「そりゃお前がそういうマスにばかり止まるからだろ?」
「そういうマスしかねェだろうが!!」
「見苦しいよなぁ。なあみんな!」
「「「うん」」」
「みんな敵かよぉぉぉぉぉ───────────────ッ!!」
 恭介はそんな真田も気にせず、
「みんな、このリアル人生ゲームもそろそろ終盤に差し掛かって来た。そこでだ、もう罰ゲームとか決めねぇ?」
「死ねこのクソやろうッ!!」
「ぐゔぁあ!?」
 思いきり顎のちょっと奥の首と頭の連結部分の隙間につま先をくい込ませ、一気に突き上げ飛ばす!
「いってぇ! うぎゃ舌噛んだ!!」
「お前なぁ! 確実に俺がビリになる事見越してそんな事いってやがるんだろ!? ふざけんなよお前!!」
「ナニイッテンノカサッパリワカラナイナァ。オレガソンナコトスルワケナイジャナイカシャナダクン」
「メチャクチャ片言じゃねェか! しかも『しゃなだ』じゃねぇ真田だ!!
「分かったよ、田中」
「全然違うし!」
「仕方ないなぁ、冗談だよジョークジョーク! 新井君」
「もはや原型も面影もねェじゃねェか!!」
「ちょっとぉ、うるさいわよ真田。自分が負けてんのを恭介の所為にするのっておかしいんじゃない?」
「そうですよ、負けは負けです。諦めて最後までやり通しましょう」
「諦めて最後までやり通すってなんか矛盾してないか……?」
 二人とも頭を振る。
「私は、罰ゲームとか後で決めれば良いと思うなー。だって、罰ゲームが分かってたら緊張して楽しめないでしょ?」
「おぉう、鈴。お前は今すげえ良い事言ったぜ。俺は感動した」
「恭介君もこんなゲーム作るなんて凄いよ♪」
「「あはははははははははははは♪」」
 何故か恐怖を感じた真田だった。
 

 それからもういくらか進んだ頃。もうゴールは目前で、独身コースだった瑞希はもうゴールした。結果は二百万。圧倒的だった。恭介達ですらまだ百万単位までいってないのに。
 沙耶はなんだかんだでゴールした。意外にも序盤かなりの大打撃を受けておきながら二位になりそうなほどだ。
 真田は……言うまでもない。
 そんな状況でさっさとみんなゴールした。
「オイ、どう考えても作者のやろう途中から面倒になったよなこれ。どう考えてももうリアルな事考えるの面倒だからって、閉じようとしてるよなこれ」
「真田ー、作者に当たるのはよせよなー」
 不服そうな顔をしつつも、話に戻った。
「じゃあ、真田の罰ゲームだが」
「結局やるんだな……」
「みんな、良いか。言うぞ」
「「「(こくり)」」」
「真田には──」
 思わず真田も唾を飲み込み、


「真田には、女装してもらおうと思うっ!!」


「はぁ!? はぁ!!? はあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
「わぁ! それ良いかもしれないわね!」
「確かに真田君は、カッコいい顔してるけど、どこか女の子っぽさもありますからねぇ。女装は……意外と似合いそうです」
「きっと可愛いよー♪」
「お前らノリノリだなぁオイ!!」
「なんだ? 不服なのか?」
「あたりまえだろうが!!」
「じゃあ別のでも良いぞ? 『裸踊り』とか、『元ボクシングフライ級の校長に喧嘩売る』とか、『今日から一週間語尾に下ネタを付ける』とかあるけど」
「女装で良いです。いえ、女装にさせてください」
「お前にそんな趣味があったなんて……」
「ねぇよ!」
「長い間幼馴染みとして一緒に居たが……全然気付かなかったぜ」
「気付く訳ねェだろうがそんな趣味無いんだから! 大体何だよ別の罰ゲーム!? 後になるほど酷ぇじゃねえか!」
「まあまあ。じゃあ、女装のセットはここにあるから」
「何でだ!!?」
「小さい事は気にするな」
「小さいか!?」
「沙耶、瑞希、鈴。頼んだぞ。お前らの方がうまくやれるだろ」
 三人は深く頷いた。
 そして真田の方を向いた三人を見た彼は、思わず「うっ」と声を漏らし後ずさる。
「「「さーなーだー、かぁいくしてあげるからねぇ♪」」」
「お前らこえぇよおおおおお!!」



 その後、学校で真田のメイド服姿や浴衣姿。女子制服姿などの写真が飛ぶように売れたと言うのは、また別の話。






「リアル人生ゲーム? (中編)」


 リアル人生ゲームは、ビジネスコースと職業コース。そして独身コースと極道コースがある。
 ビジネスと職業は市販のと似たようなものだが、アイドルやスポーツ選手などが無い。リアルじゃないって事で、先の方にスカウトされた、みたいなのが置いてあった。
 独身コースは言うまでもなく独身なコース。つまり結婚出来ない。かわりにゴールは速いしお金も結構稼げる。どうやらこの前に見た独身は早死にする、っていうのを現したらしい。
 で、彼らが一番気になっているのは……
「恭介、なんだこの極道コースっつーのは……」
「ヤクザになるコースだ」
「リアル云々言ってたのは誰じゃあぁぁ!!!」
「まあまあ、話を聞けよ真田」
 沙耶達に落ち着かされる真田。
「これも一応リアルなんだぜ、確かに聞いただけじゃリアルじゃないかもしれねぇが、世界には裏の世界があるだろう? それを描いた世界なんだ。知られざる世界の裏なんだ!」
「なになに……、『シマが取られそうになる。戦争勃発、戦争資金として五万払う』……」
「こんなドロドロな人生ゲームがあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ここにあるだろ」
「そういう話じゃねぇ!!」
 だが、人生ゲームは勝手に始まる。
 恭介は中心のルーレットをまわした。9。
「よぅし、出だし好調! 9は……職業コースだな」
 職業コースを9個進めると、
「えっと、コンビニのバイト、か」
「それ職業なのかしら……」
 次は沙耶だ。ルーレットは1。
「ビジネスコースね、1って言うのは気に入らないけど」
 一つ進めると、『就活で何度も失敗。交通費5000円払う』。
「……初っ端から5000円も? 全額じゃないの」
「交通費、ってのがまたあれですね……っていうか5000円も使うって、どこから来たんでしょうか……」
 瑞希。4。
「私は……うぇ、独身コースだ」
「有り得そうで恐ぇな……」
「有り得ないよっ!」
 『仕事に生きた、給料30000円』
「給料日のマスじゃないのに給料貰ってる……」
「独身コースだからな!」
「胸はって言うな!」
 鈴は恭介と同じく9を出して職業コースのコンビニのバイトになった。
 続いて最後に真田。
「お、10じゃないか。ラッキー!」
「アンラッキーだなお前」
「なんでだよ?」
 瑞希と沙耶と鈴が指差すその先は──
「ご、極道コースぅーーーーーーーーッッッッ!!!」
「10は……おぉ、厄介な組のボスを暗殺。報酬としてボスから10万もらうだってよ。良かったな」
「良くねぇよ!! 人殺しちまってんじゃねーか!」
「極道だからな、それくらいあるさ」
「無くて良いだろうが!! 仮にも人生ゲームだろ!」
「『リアル』人生ゲームな」
「極道コースがある時点でリアルじゃないだろ!」
「一般人に取ってはな。だが向こう側の連中に取ってはリアルなのさ」
 ちなみに、とつなげて
「収入があるマスはかなり少ない上にゴールまでかなり長いぞ」
「ただのいじめコースじゃねーか! しかもかなり悪質な! 10出させて喜ばせてからの突き落とし!!!」 
「騒ぐなよ、次俺なー」
 人生ゲームを初めて長く感じた真田だった。