今日、トリック劇場版の第三作目らしき物の、特別割引券を本屋で貰いました。


 あれだよ、ご自由に持ってってくださいって感じの所にある奴。

 えっと……『霊能力者バトルロワイヤル』だとか言ってるけど。
 

 第一も第二もこんなのじゃなかったはずだから第三作目だと思うんですがねぇ。こういうのに自信が持てない奴な物でww


 もしやるなら観に行きたいもんだねぇ。


 第八話「感動です、今回だけかもだけど」(2)



 真田と恭介は走っていた。
 後ろから迫り来る褐色の巨大ロボから逃げるためだ。
 サンゼラフィスと呼ばれ褐色のロボットは、中に秦然路がコックピットで操縦している。身体がスマートなので機動性は高い。手に持ったハンドガン型の人にしてみれば巨大な銃は、その機動性を少しでも落とさないようにするための物だろう。腰にはハンドガンのマガジンがいくつかぶら下がっている。
 地上戦用の所為か、背中のバーニアは小さい。それでもサンゼラフィスを飛ばすには十分な大きさだ。そのバーニアには近接専用のナイフが四、五、六本ほど備えられている。
 装備を見る限り、機動性に特化させたため攻撃力はかなり低い。が、そんな事は真田と恭介には全く関係のない話だった。
 攻撃力が低い、というのは言うまでもなく、同じロボットである『機械化戦具(ジャベリン)』の中での話だ。普通の人間が機械化戦具の武器に当たって大丈夫な訳が無い。そんな奴がいたらスーパーマン意外の何者でもない。
「くっそおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ! 何でこんな事になるんだよおおぉおぉぉ!!」
「真田ぁッ! 情けねぇなぁ、こんな程度でくたばってんのかよ!!」
「俺の遥か後ろで肩息しながら気の棒杖代わりでグダグダ歩いてる奴に言われたくねぇっ!!」
 あ、こけた。
「っていうか恭介、『イーグレス』はどうした!」
「いやぁ、それがさー。持ってくんの忘れちゃったよー」
「てめぇいっぺん死ね!! なんでこんな時に忘れるんだよっ」
「まさかこんな事になるとは思わないだろ普通ー」
「予想くらいは立てられるだろ巨大ロボかもしれないとか言ってたんだからよぉ!!」
「……、てへっ♡」
「いっぺん死ねええええええええぇぇぇぇぇ────────────ッ!!」
『お前も死ねバーカ!!』
 後ろを振り返ってみればもう秦然路の駆るサンゼラフィスはもう真後ろだった。今に踏みつぶされそうな距離だ。
 普段出さないような女性顔負けの甲高い悲鳴をあげながら涙目で走って逃げた。恭介は……後ろにはいなかった。踏みつぶされたのかもしれないと思ったが、「殺しても死ななそうだしいっか」と呟いて放っておく事にした。
 肺がつぶれそうなほど走っていると、ホテルの裏口が見えた。真田はドアを蹴破るように飛び込んで行き、瞬間的に後ろを振り返る。……サンゼラフィスはいなかった。
 ──代わりに何故か泥まみれの恭介がいた。


    * * *


 客室に戻った真田と恭介は、沙耶達を叩き起こして報告を済ませる事にした。とはいえ泥だらけの恭介はさっさち風呂に行かせておく。
「まーさか秦然路とサンゼラフィスが出てくるとはねぇ。私達も行けば良かったかしら?」
「あの状況じゃ逆に足手まといになってたよ」
 サンゼラフィスの機動性を考えると、沙耶達の足で逃げ切れた可能性はかなり低い。
 嫌な言い方ではあるが、沙耶達はいなくて正解だっただろう。
「でも多分新聞に写ってた『機械化戦具』はサンゼラフィスじゃないでしょう。こっちに移ってるのは全然もっとゴツいですから」
「確かに……つっても、『支配せし者』の『機械化戦具』なんてサンゼラフィスくらいしかあんまり知らないしなぁ」
「部長くらいだよね、他に知ってるのって言うと」
「形は見た事無いからまだアイツのだとは出来ないけどね」
「あー、くそ。最近七話くらい何事も無かったから動きが鈍ってるかもしれない。恭介はともかく、お前らはどうなんだ?」
 三人は問題ない、と言うように頷く。
 普段故に想像出来ないかもしれないが、恭介達は全員身体能力は高い。少なくとも平均以上はあるだろう。ぶっちゃけ、それくらいないと仕事ができない。
 私設集団『K・S・S・M・R(恭介・真田・沙耶・瑞希・鈴)』。恭介が『支配せし者』のデータを偶然ハッキングして得たデータを元に、彼らが使っている物とにたような物を造り出す事に成功したわけだ。
 それが、『機械化戦具(ジャベリン)』だ。
 これには色々と種類があったりしたりしているが、数自体は少ない。戦闘用としてはやはり強力だろうが、作るのに膨大な時間と資金がかかるため、恭介のように容易に作るような物ではない。
 ちなみに、その資金は誰かを脅して手に入れたらしい。
 その内闇討ちでもされるんじゃないかと思う真田だった。
「ふぃ~……さっぱりしたぜぇ。風呂最高っとぉ」
「恭介、出たなら『イーグレス』の調整しとけよ。使う可能性がかなり高いから」
「お前の『クローゼンツ』もな。たまには働け」
「恭介が言う事じゃない気がするんだけど。アンタが働く時なんて遊ぶときか戦うときだけじゃない」
「俺が働いて良い事があるとでも思ってんのか? 今までの歴史を振り返ってみろ、俺は働かない事が仕事だと言う事を物語っているではないか」
「……そうね、その通りね」
「恭介が今までに働いた時にはジュースをこぼしてパソコンを壊し、イラついてなぐってパソコンを壊し、『機械化戦具』の調整用器具をぶちまけてパソコンを壊し、と。まぁざっと五十台ほどのパソコンが昇天させられていますからね」
「ある意味天然なのかもな、こいつ」
「だろ? だから俺はいつも通りで良いんだよ」
 それもどうかと思う、と真田と沙耶と瑞希と鈴は思った。









 第八話「感動です、今回だけかもだけど」(1)


 海に行こうとか言い出した恭介は言う事を聞かず、強制的に真田達は海に連れて行かれた。
 ちなみに、今は四月である。海に行くのは自殺行為だと分かっているのだろうか。
 恭介は一面に広がる水の世界を見渡すと、
「いぃぃぃぃぃぃヤッッホオオオオゥゥゥゥゥぅぅ!! 海最高ッ!」
「オイ、そろそろ話せよバカ」
「え? 何を」
「ここに来た理由だ! 四月だってのになんでこんなとこ来たんだよ!?」
「ふっふっふ……それはだなぁ」
 恭介は持っていたバッグを地面に置き、その中から新聞の切れ端を取り出した。貼ってある写真には人影のような物が写っている。見出しには『謎の巨人現わる! その謎に急接近!!』とかなんとか。
 なんだこれ、と訪ねると、
「この海の付近に謎の巨人が出現したらしいんだよ。って訳で──」
「もう分かったわよ。その謎を明かそうとか言うんでしょ?」
「え、何で分かった?」
「恭介の行動パターンは大体同じですから」
「いい加減読めてくるよねぇ」
「うーむ、なるほどな。俺はそんな事まで知られてしまっているのか……」
「嫌でも知らされるだろ」
「……照れるぜ♡」
 皆引いていた。
「で、それの信憑性と、実際にいたとして襲って来たりしたらどうするんだ?」
「お、巨人の存在は否定せんのだねえ」
「タイトルだしな、非日常は」
「まぁ、そこはとりあえずそん時はそん時って事で」
「適当だなぁ……」
「いつもの事ですよ」
 恭介以外の四人は大きくため息をつき、どうせ言っても聞かないだろうと考えて諦める事にした。
 どうやら部活もしていないのに合宿という事になっているらしく、随分とお高そうなホテルに泊まる事になった。
 外観からして高そうなのだが、中に入ってみればもっと高そうだ。
 やけに広いロビーにくわえ、高級レストランみたいな食堂。部屋に入ればどこの貴族の家だとでも言いたくなるほどの場所だ。ベッドはふかふか、何故かシャンデリアとかある。
 恭介の事だからどうせ教師でも脅してやったんだろう。この男はそう言う事の出来る奴だ。
「この一部屋だけなんですか?」
「仕切りとかあるしいいだろ?」
「安心しろ、覗こうとしたら俺が殴り飛ばしてやる」
「それなら安心だね!」
「俺への信頼は……?」
「そんな物があるとでも思ってたなら小学生、いや幼稚園からやり直した方が良いぞ?」
「そこまでいかなきゃならないほどなのか!?」
 地味にへこんでいるらしかった。
 とりあえず荷物を置いて、今回の目的の謎の巨人とやらの話を進める事にした。
「で、情報的には一体どんな感じなんだよ恭介」
「ん? あー、そうだな」
 まず、と言って。
「謎の巨人、長いから巨人な。その巨人は昨日このホテルの裏にある山に現れたらしい。それを部屋から見たカメラマンが撮ったんだと。あとで調査に行った連中の話じゃ、でかい三、四メートルくらいの足跡みたいなのがあったとか」
「人為的とかって事は無いの?」
「そりゃなさそうだな。俺も実は行ってみたんだけど、あれは掘ったりしたって言うより何か重いもんで押しつぶした感じだった。人間がそんな事すれば嫌でも目立つだろ?」
 恭介はこう言うときだけ真面目で、まともなことを言う奴である。日常的な話ではないが。
「たぶん、巨大ロボットの一種だと思ってる」
「だとしたら、またうちの『支配せし者(バンガード)』の連中か? だとしたら最終手段とかも考えた方が良いんじゃ?」
「えー、『イーグレス』使うのー? まぁた俺が頑張んなきゃ行けないって訳かぁ?」
「言い出したのアンタじゃない。責任は取りなさいよ」
「良いじゃん、『イーグレス』に乗ってる恭介君カッコいいよ?」
「むぐぐ……仕様がねえなぁ……」
「ちなみに。俺は使わんからな。調整中だし」
「えぇ!? じゃあ俺だけが戦うのか!!?」
「まぁまぁ。もしものときは私達も加勢するし」
 納得のいかなそうに顔をしかめる恭介。しかし何か諦めたように息を吐く。
「期待してるぜ、きょーすけさんよ」


    * * *


 夜。恭介達はホテル裏の山に登っていた。
 目撃情報は夜だとか言って、十二時だというのに山登りさせられている。
「くそぅ……何が悲しくてこんな時間に山登りなんぞせにゃならんのだ……」
「楽しいから良いだろ?」
「楽しい訳あるかっ」
 それだけ叫べりゃ良いじゃん、と余裕の笑みをしている恭介だが、微妙に口が引きつっている。
 沙耶達女性陣は、『寝不足はお肌の大敵ぃッ!!』とか言って来なかった。
 ……ちょっと羨ましかった。
「お、ここだここだ」
 ようやくたどり着いたその場所は、山頂のちょっと下辺りにあった。
 そこには、まるで映画の中にでも出てきそうな足跡だった。
 形的には四角いようだが、長方形と言うより台形に近い。恭介の言った通り、掘ったと言うよりは潰された感じの方が強い。そもそも掘るだけなら岩が砕けているのがおかしい。
「おーおー、随分とやってくれてるねぇ」
「こりゃ、確定なんじゃないか? 『支配せし者』の仕業って事で」


「そのとおおおおぉぉりぃッ!!」


 裏山に響く女物の甲高い声。
 その声の主は、恭介達のちょっとだけ上の方にいた。っていうか山頂である。
 茶色い髪をツインテールにした、いかにも気が強そうな娘だ。が、
「なんだよ、また女装の『男の娘』かぁ。なーんだ、来て損したぜ」
「恭介、さっさと帰って寝よう。俺はメチャクチャ疲れた」
「その前に風呂だろ風呂。温泉は入れないけど部屋のなら……」
「んー、まあ仕方ねェかもな。入らないよりは全然マシ」
「じゃあ早く部屋に戻った方が先に入るって事で」
「同着の場合は?」
「ジャンケン」
「適当だな……。お前はそう言うときだけ適当なんだか──」
「コラぁっあたしをはぶって話をするなぁ!!」
 身体は帰り道に向け、視線だけをそちらに向け、
「なんだよ女装の男の娘まだいたの?」
「ってかいい加減女装するの止めたらどうだ?」
「うっさい! お前に言われたくないんだよっ」
「それは一理あるー。お前女装するもんな」
「あれは罰ゲームでさせられただけだッ」
「そーゆー名目だろ?」
「違うっ!!」
「えー、うっそだー」
「嘘じゃな一つーの!!」
「だから! あ・た・し・を・はぶいて話すんなーーーーーーーー!!」
 うるせぇなぁ、とその女装っ娘を睨む。
 ぶっちゃけ、ここまで上ってくるのに疲れてる状態でこんな変態と関わっている暇はない。さっさと終わらせたい恭介達としては、この変態は邪魔な訳だ。
「いっつもあたしをバカにしやがってこのバカっ!」
「そうは言ってもお前が勝手に現れて勝手に被害妄想抱いて勝手に怒ってるだけだと思うんだが? そこの所どうなんだ、秦然路(しんぜんじ)?」
「うっさいうっさいうっさい! アンタらなんか潰されちゃえば良いんだっ! 出て来なさいよ『サンゼラフィス』!!」
 そう言った瞬間、秦然路の背後に巨大な魔法陣のような物が現れた。
 そこから人の手のような者が現れ、次に足。次に頭。そして最後に胴体。


 そこに巨人が現れた。