昼過ぎから
横なぐりの雨と強風

凄いよ

台風のような春の嵐でね

家の東側の窓は
叩きつけるような雨だよ

ほんの一週間前には
満開だった桜も
少し前の雨と風で
半分ぐらいになってしまって

今日の嵐で
ほとんどが散ってしまうんだろうね


会社のすぐそばに小さい川が流れていて
川沿いに桜が並んでいるんだよ


先週雨が降った日
仕事帰りに川面を見たら
凄い数の桜の花びらがいっぱいで

とても美しかったけれど
なんだか悲しい気持ちになったよ



寒くて長かった今年の冬がやっと終わって


桜に逢えるのをずっとずっと楽しみにしていたのに


もうさよならなのかい



今年は本当にちょっとだけだったね



うん


また来年


逢えるのを


楽しみにしてるね。







思い出の中にいつまでも
生き続ける私の街
煙くてくさいガス工場
笑いころげて遊んだ
雨の中夕べの路
走って帰ったものだよ
刑務所のわきを通り
共同井戸のわが家


シャツ工場のサイレンが鳴って女達を呼び寄せる
失業中の男たちが
母親がわりの毎日
景気が悪くて鍋は空っぽ
それでも愚痴も言わずに
だってみんな心の奥では
この街を誇っていた


小さなバンドで歌を歌ってあの日初めてお金を稼いだ
音楽に溢れたデリーの街
とても忘れられない
それをみんな置き去りにして
街を出るなんてつらい
だってここは音楽を知り
夫を知った街


今度帰って目を疑った
酒場は焼け煙りが舞い
懐かしいガス工場には
兵隊がたむろしていた
鉄条網が張り巡らされ
戦車と銃剣の街に
軍隊の前にひざまづいた
私が愛した街


今ではもう音楽もない
でも街の人は絶望してない
忘れはしないこの出来事を
まなざしが語っている
私にできることはひとつ
戦うことだけなのだ
青春を過ごしたデリーの街
私の愛した街









おおダニーボーイ
あの調べがおまえを呼んでいる
谷から谷
そして山々の間を伝って

夏は去り
花々は枯れ果てた
おまえは行かねばならず
わたしは帰りを待つだけ

でもどうか帰っておいで
緑の草萌える頃には
でなければ白い雪が静かに谷間を覆う頃には

晴れの日も曇りの日も
わたしは必ず待っていよう
ダニー・ボーイ
愛するおまえ



おまえが帰った時
花々は枯れ
わたしもこの世にいなかったら
どうかわたしの眠るところを訪ね
ひざまずいて祈りのことばを言って欲しい

おまえがどんなにそっと歩こうとも
わたしにはわかる
わたしは優しさと暖かさに包まれるだろう

そしてひざまずき
愛していると囁いてくれたなら
安らかに眠れるだろう
再び会えるその時まで



でもどうか帰っておいで
緑の草萌える頃には
でなければ白い雪が静かに谷間を覆う頃には

晴れの日も曇りの日も
わたしは必ず待っていよう
ダニー・ボーイ
愛するおまえ












この歌を聴くと
いつも泣きそうになってしまう

それはきっとこの歌の旋律の持つ不思議な力のせいのような気がする


「ダニー・ボーイ」
の原曲はアイルランドのトラディショナル・ソングだ
昔から歌い継がれてきた古い民謡の
「ロンドンデリーの歌」
として知られる旋律で
それに歌詞を付けたものが「ダニー・ボーイ」という歌なのだ


この歌詞はイングランドの弁護士フレデリック・ウェザリーの作といわれる

元々は別の曲のために1910年に作られた詞だったがそれは広く知られるには至らなかった

1912年にアメリカにいる義理の姉妹から「ロンドンデリーの歌」の楽譜を送られると彼は翌1913年にその詞をこのメロディーに合うように修正して発表した

義理の姉妹という人は音楽教師だった
旅行で出掛けたアイルランドの街角でフィドル(ヴァイオリンのような楽器)を弾く街頭芸人のメロディに心を奪われた

その街頭芸人は盲目だったという

そのメロディに魅せられた彼女は楽譜にその曲を移し取りフレデリックに送った


アイルランドはトラディショナル・ソングの宝庫だ
その多くはラヴソングだが史実を歌にしたものも多い

アイルランドは古くからイングランドからの侵略に悩まされてきた
この「ロンドンデリーの歌」も
一説にはアイルランドの古い貴族が所持する
先祖から受け継がれた広大な土地を
イングランドの王によって奪われた事を悲しんで曲にしたものだと言われている



歌詞は女性の立場で男性に別れを告げる歌として解釈できる内容だが

男性歌手によっても多く歌われてきた

また両親や祖父母が戦地に赴く息子や孫を送り出すという設定で解釈されることも多い


アイルランドの歴史的背景を考えると
どれも当てはまるようにも思える


歌というものは
メロディがしっかりしていれば
時代によってその歌詞が変わっても
ずっと歌い継がれていく生命力のようなものを持っているものだと
この歌を聴くたびに思うのだ。