24時間テレビで「石ノ森章太郎物語」を見た

言わずと知れた
手塚治虫と並ぶ漫画界の巨匠だ
子供の頃、友達と競うように読み漁った漫画の中でも
石ノ森章太郎の作品は何か特別な輝きを放っていたのを子供心に感じていた

それは他の漫画家に比べて絵の上手さがワンランク上だった事と
登場する女性が不思議に謎めいていて
しかも色っぽいのを感じていたからだと思う

少年誌に登場する漫画家で石ノ森のような魅力的な女性を描く人は他になく
しいて挙げるなら松本零士の描くメーテルのような存在だが
僕にとっては石ノ森の描く女性は漫画界において唯一無二の存在であった


何故、石ノ森の描く女性はこれほど魅力的であるのか
僕には長い間の謎だった

それが今回の「石ノ森章太郎物語」を見て
やっと分かったような気がした

石ノ森は宮城県の出身だったのだが
子供の頃から絵を描くのが好きで
高校生になると漫画の同人誌を作るほどに腕前を上げていた
しかし、父親は漫画家になることに大反対で、家族で石ノ森の味方になってくれたのは病弱な姉だけだった

親の反対を押し切って上京した石ノ森を応援したのも姉だった

上京した石ノ森は漫画家の聖地ともいうべきトキワ荘に居を構え
やがて漫画家として成功していく
石ノ森を心配し度々トキワ荘を訪れていた姉は食事の世話をして弟を支えた

しかし幸せな日々は長くは続かなかった
ある日台所で倒れた姉は病院に運ばれて一旦は持ちなおしたものの、その後息を引き取ってしまった



石ノ森の描く女性には彼の姉の姿が強く反映されている
限りなく優しく、意思の強い、母性を持った女性

サイボーグ009に登場する女性
「幻魔大戦」に登場する主人公「丈」の姉

どちらの女性にもお姉さんの分身のように思える


昭和に生まれた漫画は
どんどん成長し、いまでは大人でも漫画を読む人は珍しくない

漫画に魂を吹き込んで
みんなに愛されるような存在に育てあげたのは
間違いなく昭和の時代に愛情を込めて描き続けた若き漫画家たちだった
手塚治虫、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、つのだじろう、ちばてつや…

昭和の時代
いい時代だったなぁ
と改めて思った。








お盆休みは有難い
特に今年の夏のような酷暑が続く年は
命を救われたように嬉しいものだ

墓参りや親戚の家にお盆の挨拶に行った他は家の中でゴロゴロしている時間が多かった
エアコンも例年とは違いつけてる時間が長い
しかた
ない事だ
これほど暑い夏は今までなかったのだから
ケチケチしている場合ではないのだ

しかし、ゴロゴロしてばかりでもつまらないので久しぶりに高校時代の友人に会う事にした

今回は夏の暑さを避けて山方面にドライブに行くことにした





山のキャンプ場
車を降りた時は空気がひんやりして避暑地にやって来た気分になったが
山道を歩いて行くと湿気が凄くていつの間に汗だくになっていた
たまらんなぁ…

避暑地に来たというよりも
蒸し風呂に入ったような気分だ

ちょっと冷たいものでも飲んでクールダウンしたいものだ

そう思って山を降りると小洒落た喫茶店を見つけた
早速入る事にした






山のキャンプ場に似つかわしくない店だが
これが今どきというものだろうか




アイスコーヒーとバナナのシフォンケーキをオーダーした
うん
なかなか旨しである

しばらく近況報告やらどうでもいい話をダラダラとして
また更なる山道を求めてドライブを続けた

曲がりくねった細い山道は対向車が現れる度にドキドキする

夕方になった頃に山を抜けて新たな町が見えてきた

少し早めの夕食の店を物色して
いい感じの店を見つけた






しゃぶしゃぶが自慢の店のようだが
暑さに負けて
天ぷら定食を注文した
少し足りないかなぁと思ったが
天ぷらのボリュームがかなりあって
お腹いっぱいになった
デザートは濃厚なプリンを選んだ
とても美味しかった

夕食を終えて店を出ると
町はすっかり夕闇に包まれていた
帰りは国道沿いに戻って、途中から海岸線沿い車を走らせた

潮風と暗い空が
少しずつ夏の移ろいを感じさせた

並はずれた今年の暑さ
毎日が辛いほどの夏だけど
この日のドライブは
僕に笑顔を取り戻させてくれた

もうちょっとだ

頑張ってこの暑さを乗り切ろう。






少し前に久しぶりにスモモのキャンディを知り合いから貰って食べた

もともと飴やキャンディは好きではないので滅多に口にすることはない

一口食べて
ずっと忘れていた記憶を思い出した




あれは僕がまだ20代の頃だった
当時付き合っていた女の子と車でデートしていた時だった
ドライブの途中で雨が降ってきた
車だったからどうって事はなかったのだが
喫茶店やどこかの店に行くのも面倒だったので近くの公園の駐車場に車を止めた


その駐車場のすぐ前に電車の線路があった

雨はますます激しく降ってきた

車のフロントガラスには大粒の雨が音を立てて当たっていた
カーラジオからは竹内まりやの曲が流れていた

「わたしね、こんな風に車の中で雨を見ながらのデートって好きだよ。誰にも邪魔されない二人だけの世界って感じだもの。」

「悪くないね。雨の音が僕らを包んでくれてるみたいだね。」

そう言って僕は彼女の手を握った

彼女の手は少し熱くて柔らかだった

ふと彼女を見ると彼女も僕を見つめていた

僕は車のエンジンを切ると
体を起こして彼女を抱き寄せた

彼女は顔を近づけてそっと目を閉じた

僕は彼女の唇にキスをした

彼女の両手は僕の背中にゆっくりと回って
二人の体は密着した

そっと唇を離すと
彼女はつぶっていた目をゆっくりと開くと
僕を熱く見つめた

今度は彼女のほうから唇を押しつけてきた
少しずつ舌を絡めると
口の中に甘酸っぱい香りが広がった

彼女が口に含んでいたスモモのキャンディが僕の口にやってきたからだった

僕はその甘いキャンディを少し味わってから
再びキスして彼女に返した

彼女は少し照れたように微笑んで
しばらくしてからまた僕の口の中に
キャンディをプレゼントしてくれた

スモモのキャンディはやがて僕の口の中で溶けて消えた


いつの間に陽が落ちて周りは暗くなっていた


突然、目の前を電車が走り抜けて行った
車内の照明が暗闇の中の僕らを照らし出した

「いや!いや!見られちゃう!」

僕は笑いながら彼女を抱き寄せた

「こうやってくっついてれば誰かわからないさ。」

彼女は恥ずかしそうに僕の胸に顔を埋めた



スモモのキャンディの味は
あの時のキスを僕に思い出させてくれた


少し頬が赤くなったような気がした。