こんにちは。
弊社では月1回メールマガジンを発行しています。
内容は生命保険を中心とした判例や裁決事例を基にしています。
判例などを読み解くと、生命保険契約の権利や、生命保険金というお金の性質が他の金融資産とは全く異なった法務的な位置づけ、或いは税務的判断基準などがその行間から垣間見えてきます。
そのメールマガジン(過去発行分)の中から抜粋してブログに載せていこうと思います。
お時間がある時にご覧ください。
法人が契約者となり、被保険者を役員又は使用人、満期保険金受取人を法人、死亡保険金受取人を被保険者の遺族とする養老保険契約については、全員加入(あるいは普遍的加入)の要件を満たす場合には、
支払保険料を2分の1を福利厚生費として損金処理することができ(法人税基本通達9-3-4(3))、
「ハーフタックスプラン」とか「福利厚生プラン」などの名称で利用されています。
また、この場合に被保険者である役員又は使用人が受ける経済的利益はないものとされていますが(所得税基本通達36-31(3))、役員又は特定の使用人のみを被保険者としている場合には、2分の1に相当する金額はその役員又は使用人に対する給与等となります。
実際には、役員は一般の従業員よりも保険金額を高くしたいと言われるケースも多いのですが、どの程度までなら保険金額に格差を設けてもいいのか、明確な基準はありません。
昨年末に公表された国税不服審判所の平成27年4月~6月分の裁決要旨を検索してみると、平27年6月19日付の名古屋国税不服審判所の裁決要旨が目に止まりました。
契約者は医療法人、被保険者は理事長と常務理事を被保険者とする養老保険契約が問題になった事例でした。
要旨では、次のように書かれています(一部省略)。
『請求人は、死亡保険金について、従業員を被保険者とする保険契約の死亡保険金に比して多額であるが、格差が存する理由として、理事長等が病院の経営に生涯責任を持ち、請求人の借入金の保証人になっているため、所得税基本通達36-31(注)2の(1)に定める「保険加入の対象とする役員又は使用人について、加入資格の有無、保険金額等に格差が設けられている場合」に該当し、請求人が支払う保険料の2分の1に相当する金額は理事長等に対する給与等には該当しない旨主張する。
しかしながら、理事長等は従業員とは質的に異なる重い責任を負っているということができるものの、通達の趣旨や「職種、年齢、勤続年数等」という列挙事由に照らせば、他に特別の事情のない限り、福利厚生を目的として、死亡保険金に大きな格差を設けることの合理的な根拠にはならないというべきである。
さらに、各契約は、請求人の福利厚生規定に定めたりすることなく理事長等の判断だけで締結されていることからすれば、理事長等は自らが本件各保険契約による経済的利益を受ける目的で締結したものと評価せざるを得ず、もはや一種の福利厚生費としての性格が欠如していると言え、「普遍的に設けられた格差であると認められるとき」には該当しないというべきであり、通達の(3)ただし書に定める「役員…のみを被保険者としている場合」に該当すると評価できるから、本件各保険料の2分の1に相当する金額は理事長等に対する給与等に該当する』
契約の内容はどのようなものであったのか、気になるところですが、同時期に加入した1年以上勤務する職員等に対する同様の養老保険契約の死亡保険金額は500万円であり、問題となった理事長および常務理事の契約の死亡保険金額は5,000万円でした。
また、前記の養老保険契約は途中で解約され、法人契約・法人受取のがん入院保険が契約されていましたから、単純に保険金額の格差だけの問題ではないと思いますが、国税不服審判所は「福利厚生を目的として、死亡保険金に大きな格差を設けることの合理的な根拠にはならない」として上記のような判断を行い、請求人の主張を認めませんでした。
(2016年3月発行第58号)
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