京都、生八ツ橋
一つ欠けてるのは抹茶味。

入っていた栞に書かれていた小説。
四神
初めに四人を見たときには、その色鮮やかさ故に、蝶と見紛うた。
良く見れば人のような歌のような形で、何やら話をしている様子である。
店先を掃く手をとめて、耳をすませた。
「今日は人が多なるわ。うちんとこにぎょうさん泊まってはる」
「まあ、お休みやもんなあ」
「まあ、お休みやもんなあ」
「白虎さんとこはまた、嵐山がえらいで」
「うちとこはほんまに人気で嬉しいわ」
ふふふ、と白が笑う。
ふふふ、と白が笑う。
美しい女性の声であった。
それを受けて、蒼は声を大きくした。
「偉そうに。うちの清水と張り合うてか」
「都に人が来るんや、どこかて有難いことやろう」
まあまあ、と黒が諌めると、二人は大人しく引き下がった。
まあまあ、と黒が諌めると、二人は大人しく引き下がった。
「それよりも、そないに大声出すさかい、聞かれてしもたわ」
八の目に見つめられ、私は戸惑ってしまった。
逃げようかとも思ったが、 盗み聞きをしていたに違いは無い。
申し訳なく思い、店の商品を少し皿に盛った。
「ああ、ハッ橋」
「これはええ。住んでると、土産にするだけで口にしてへんかった」
喜ばれてほっとしたこともあり、 熱い茶もいれておいた。
「これはええ。住んでると、土産にするだけで口にしてへんかった」
喜ばれてほっとしたこともあり、 熱い茶もいれておいた。
四人は銘々に楽しみ、礼を言う。
「これからは毎日ここで待合せにしよか」
黒が言い、全員が賛成をした様子で、 私を見る。
「これからは毎日ここで待合せにしよか」
黒が言い、全員が賛成をした様子で、 私を見る。
「毎日お菓子とお茶ぐらいしか出せませんけど、よろしければ是非」
以来、十余年の付き合いになる。
以来、十余年の付き合いになる。
「おはよう」
朝の東山は、うっすらと影を盛るようで、その中に朱の人が現れると、 急に色彩が戻ってくるかに見える。
朝の東山は、うっすらと影を盛るようで、その中に朱の人が現れると、 急に色彩が戻ってくるかに見える。
しばらくすれば四人それぞれの色が
満ちて、まるでそれに合わせて街が色を取り戻すようであった。
「今日は、あれやて。新しいカフェがオープンするらしいで」
満ちて、まるでそれに合わせて街が色を取り戻すようであった。
「今日は、あれやて。新しいカフェがオープンするらしいで」
「へえ、玄武さんとこに」
「そうや。ここんとこ若い者が増えて、 ええわ」
四人と私は、毎朝世間話をしている。
四人と私は、毎朝世間話をしている。
そうして、少しすれば皆それぞれの場所に、帰って行く。
「おおきに」 「ありがとう」
さあ、と風に乗って四人が過ぎ去って行くのを、私の隣で不思議そうに見ている者が居た。
さあ、と風に乗って四人が過ぎ去って行くのを、私の隣で不思議そうに見ている者が居た。
一昨年からこの界隈に下宿をしている、大学生である。
「今の方々は?蝶のようにも見えましたが」
「やはり蝶と思われますか」
私もそう思ったことがあるというと、
学生は微笑んだ。
「やはり蝶と思われますか」
私もそう思ったことがあるというと、
学生は微笑んだ。
「なに、四神ですわ」
シシン、という響きに戸惑いが見えたので、青龍、朱雀と名を口にすれば、 ああなるほど、と彼は得心がいった様に頷いた。
シシン、という響きに戸惑いが見えたので、青龍、朱雀と名を口にすれば、 ああなるほど、と彼は得心がいった様に頷いた。
「それで色鮮やかに」
「この時間に映えるでしょう。
「この時間に映えるでしょう。
一日が、 さあっと色づいていくような気がしますわ」
彼らが食べた残りの商品であったが勧めると、どうもと口にする。
彼らが食べた残りの商品であったが勧めると、どうもと口にする。
「毎朝のお付き合いですか」
「毎朝集まって、そして自分の場所に戻っていかはります。
朝の報告会議のようなもんですか」
そうでしょうね、と若者は言った。
そうでしょうね、と若者は言った。
「四人が絡み合って、しっかり結びついて都を守ってくれているのでしょうね」
そして空を見上げるので、私もつられて上を見やる。
そして空を見上げるので、私もつられて上を見やる。
青空に、色とりどりの四神が、笑いながら手を取り合っている気がした。
都はこれからも変わらず、八の目に見つめられているのであろう。 聖護院八ッ橋総本店
なかなか面白いお話しでした。
熱いお茶と生八ツ橋を楽しみながら読ませて頂きました。
