さて、再調整です。

前稿でほとんど不満のない特性が得られたのですが、さらに追い込みます。まずはBass-Mid間に見られるほんの僅かなディップを調整で無くしたいと思います。

 

前稿の特性で、あれだけフラットに出たということは、バッフルのスラントも含めたバッフルシミュレーションが巧く行っていたことの証明です。しかし、机上どおりには行かないのは世の常ですので、まずはそこにメスを入れてみます。

 

最初に、他はそのままでMidとHighのみ、10cmの遅延を入れてみました。(MidとHighを10cm奥へ後退したのと等価。)すると、Bass-Mid間にボッコリと大きなディップが現れました。なんだ、そもそもかなり巧く行ってるのじゃないか?

ディップが大きくなった・・・ということは? 逆をやるとどうなるのだろう

今度は、Bass (SB  Acoustics)だけ、3cm分の遅延を入れてみました。たった3cm。

 

その結果が、こちら。(ゲインの再調整も行ってます)

 

 

200-20kHzのクロスオーバー領域は怖いくらいどフラットですね。。。

 

3wayでこの結果は、なかなかです。4wayはドライバ間相互干渉が多めになるから調整は死ぬほど大変...と構えてたのですが、結果は思ったよりずっとあっけないです。

 

少し低域がポッコリしているのは、PRsの錘が少し足りないのでしょう。計算どおり、後10gほど付加すればここも落ち着くはずです。そちらも暇を見てやりましょう。

 

さて、特性も整ってきたのでもう辛坊たまらんです。ばんばん視聴して行きたいと思います。

 

・・・いやはや、もう言葉も無いです。こんなにコレと言った特徴のない音は初めてです。だから適切な評価もあまり浮かんできません。Alpha、Beta、Gammaに共通しているのが「どれも凄く音が似ているな」という点です。これは、スピーカーの音質が似通っているというよりは、スピーカーがノンカラーレーションに近づいてゆくと、スピーカーの個性や特徴が消えてソースの音に近寄ってゆくつまり、音が似ていっているということなのかも知れません。

 

Stereophile いわく、「Thiel AudioのCS2.3, 2.4はノンカラーレーション(没個性)」だそうです。それと似せて同じアプローチで作ったBetaは、その実測特性も含めて一番特徴が無い音と思っていました。しかし、AlphaはBetaと比べてもさらに特徴が無いように聞こえます。ノンカラーと思っていたBetaも、Alphaに比べれば刺激臭のする所があった。それは、非線形要素なのだと思います。

メカニカル構造と電子的補正でマルチウェイを構成するというThielのアプローチは、DirectivityIndexの視点でも優位性があって高く評価できるものです。でも、フィルターが緩く非線形要素を十二分に抑え込めないという視点では、フィルタ峻度の高いAlphaの方に有利があるのではないか。(仮説)

 

Alphaの音は4機のなかで最も音が柔らかいです。そして、最も奥行きが深々としています。

かといって鈍い音のわけではなく、これまで以上に細かい音を繊細に分解しています。非線形を起因とした「刺激臭」が殆どないので、一聴すると柔らかいと感じるのだと判断します。音質を判断するために聴いてるのに、いつの間にやら音楽の方に集中して続けて聴いてしまう自分が居ます。やっとスピーカーの存在(らしきもの)を消すことができつつあるのかも知れません。そうした、アンプやスピーカーの「存在感」「特質」が明らかな方が、オーディオは楽しいかも知れないですけどね。。。

 

Marillion : Brave (2018, Steven Wilson Remix)

 

もともと名盤ですが、2018年にSteven Wilson師匠がリマスタリングして、音質がまるで別物になりました。こっちを聴くともうこっちしか聴かなくなります。

周波数特性通りに低域が豊か。ほとんどの場合において3wayで済んでしまうくらい、大変なワイドレンジです。ただし、低域の豊か、硬い、柔らかい、乾いた、湿った、張った、締まった、リズミカルな、深い沈み込み・・・その辺はすべてソース次第というところです。ソースごとにころころ音色が変わるので、このスピーカー固有の質というものは感じません。録音の質の違いを克明に描き分けています。美しい和音、震えるようなわななき、広い音場・・・いや、そんなのどうでも良くて、音楽に引き込まれてゆきます。

 

Elliott Carter - The Composers Quartet – String Quartets Nos. 1 & 2

 

なんという弦の美しさ・・・。

冷え切った~高分解能な~すごいステージ感の~触れれば切れそうな高弦・・・がこのソースですが、Alphaは少し違いました。特質は同じなのですが、弦が柔らかくて美しいのです。単純な弦音ではなくて、その周りに纏う繊細な気配と雰囲気が、弦の刺激感を無くしているのかな。恍惚とします。弦が美しいと本当にクラシック聴くのが楽しい。

 

Bolcom – Symphony No. 4 / Session I: Leonard Slatkin, Saint Louis Symphony Orchestra, Joan Morris, William

 

こちらは現代音楽ですが。音が遠い~~~  

物凄い奥行き感。そして、オフなのにドラムやティンパニーが生々しい。この頃のNew Worldは本当に素晴らしいです。見通しのよいステージを3Dビューで俯瞰している感じがします。

 

 

3wayはもうええわ、という感じ。

このへんからXbassも加えて簡易調整後に4wayにて視聴しました。もう、笑っちゃう感じです。何聴いても笑みがこぼれてしまいます。ブレイクインってナニ?そんなもん要らないです。鳴らし始めから十分に熟れているので、むしろこのまま経年変化(=劣化)して欲しくないです・・・。

 

Torsten Nilsson – Cantate Domino: Marianne Mellnäs, Alf Linder, Motettenchor Der Oscarkirche, Stockholm

Julsång

 

こちらは過去最高。自宅以外で聴いた経験も含めて歴代随一でした。

ふるふると空間を揺するパイプオルガンと、天井から降ってくるかのような清冽なソプラノとコーラス。

北欧の教会へトリップできます。

 

Human League - Crash

Tr3: Human

 

こんな録音だったか(笑)

まるでぬる湯の温泉に使っているみたいにほわほわと暖かく、キモチイイです。

 

Esbjörn Svensson Trio* – E.S.T. Live In London

Tr1: Tide Of Trepidation

 

すべてが生々しくてヤバい。しかも繊細。

バスドラの圧が凄い。吹き飛ばされそうです。

 

Aimer - Walpurgis

 

鳴るなり、娘がふっとんできて隣にちょこんと座り一緒に聞き始めました。

 

Demians - Building an Empire

 

凄い・・・もう、茫然自失です。こんな音だったの?

 

たかがロック、されどロック。このとてつもない迫力と相容れないはずの透明感。一曲め、The Perfect Symmetryは、あっけに取られたまま聴き通し。...ラストトラックのSandに至ってはもはや泣きそうです・・・。フレンチロックならではの文脈があって、彼らにはもっと沢山アルバム出してほしかったな。

 

 

 

 

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