大伴ノ御行、粗末な狩猟の装束で、左手より登場。

中年男。

荘重な歩みと、悲痛な表情をとり繕っているが、時として彼のまなざしは狡猾な輝きを露呈します。

暫くは外で躊躇しているが、思い切ったように土間の敷居の所に姿をあらわします。

御行の問いかけを、適当にあしらう造麻呂。

業を煮やした御行は、自分が大納言、大伴ノ宿禰御行であることを明かします。

平伏する造麻呂。

造麻呂は掌を返し、御行におもねる造麻呂。

なよはしあわせものでこわざいます。

大納言様と聞いて、なよたけもどんなに喜びますることでございましょう、とまで言います。

そこで造麻呂の口から、なよたけが棄て子であった事が明かされます。

この裏の竹林の中に棄てられて、泣いていたのを、亡くなった婆さんと一緒に拾ってきたのです。

生憎、造麻呂夫婦には子供がひとりも恵まれなかったので、大喜びで養女にしたのです。

なよたけの素性に就いては、唯の一度だって、一切曖気にも出したことがないのに「お父さん、あたしはあなたの子供ではないのね」と何時の間にか感づいていたのです。

全く親の仕事の手伝いもせず、天気さえよければ、一日中、この辺の子供達と一緒になって竹山の中を駆けずり廻っているのです。

「わたしはお天道様の子」と言ってみたり「あたしはお月様の子だ」と言ってみたりして、造麻呂を困らせるのです。

そうかと思うと、生物ならば、鳥けものや虫けらに至るまで無性に可愛がるのです。

造麻呂でさえも時々、なよたけはもしかすると何かの生まれ変わりではないかと疑ってみることがあるのです。

御行は、なよたけの素性も御行の素性も、露顕の式でも済むまでは絶対に秘密にして、誰にも知らさぬように言います。

葵祭の日にあたりに、お迎えの車をこちらに寄越すとも言います。

造麻呂はなよたけを呼びに右に退場します。

なよたけの琴の音がぴたりと止みます。

同時に土間の敷居の所に、石ノ上ノ文麻呂と、清原ノ秀臣が凜然として立っています。

御行と対峙する文麻呂たち。

途端に、右手なよたけの部屋の方から、彼女のヒステリックな叫び声が聞こえて来ます。

大伴ノ御行、土間の外に立っている二人を突き飛ばさんばかりの勢いで、倉皇として、左方へ逃げ去ります。

造麻呂、右手奥からよろめく様に出て来ます。

造麻呂は大納言の後を追って、よろめくように左方へ退場します。

やがて、舞台は急に台風一過。

不気味な程、寂然とします。

文麻呂も清原も、まるで空けたように、呆然として、立ちつくしています。

やがて、あたりには、再び次第次第に緑の木漏日がきらきらと輝き始めます。

それに従って、思い出したようにまた小鳥が遠近で囀り始めます。

なよたけ、右手奥の部屋から、かすかにすすり泣きながら、静かに姿を現します。

草履をはいて、土間の外に出ます。

二人の青年が立っているのに気付き、瞬間、身じろぎをするが、つと逃げ去るように小路の方へ行きます。

二人に背を向けて、悲しげに泣きじゃくっています。

文麻呂は初めて見るその美しい姿に恍惚としてしまいます。

今回のアップはここまでです。

なよたけを巡って、文麻呂、清原、御行たちが競いあう雰囲気ですが、どうなるのか、まだ読んでいません。