男1、男2、女1、その母の四人が、それぞれ靴を脱いで、ゴザの上にあがりこみ、あちらこちらと食い散らかしています。

女2は、やや離れて一人しゃがみこみ、そのかたわらに、男3が所在なげにたっています。

片一方が裸足であるから、まだ靴下は見つかっていないらしいです。

食べ散らかす女1たちは、男3と女2にも一緒に食べるように誘いますが、男3と女2はかたくなにこばみます。

男3は弁償しなければならないと思い込んで残っているのですが、結局全員頭割りで弁償することになります。

頭割りなんだから食べなくちゃ損だという女1。

靴下の方ですが、実は母親が見つけていたのです。

それでまた一悶着しますが、ここまで食べたのなら全部食べてしまおうということになり、男3と女2も食事に加わります。

レコードも別のレコードをかけて、宴もたけなわになった時、ハンディ・トーキーを持った男4が何となく、見るような見ないような風をして、通りすぎます。

男4が再び現れます。

やや遠慮しながら、みんなの様子をうかがいます。

手にしたノートに書いてあるものと、そこにあるものを、それとなく照合しているようです。

みんな次第に手を止めます。

男4によると、ここの人たちは、この先の車の中で、遺体で発見されたそうです。

6人の一家心中です。

ハイキングに出たまでは分かっていたのですが、その気になれなかったようです。

六人は動かないよう言われます。

係官がうかがいたいことがあるそうなのです。

最後に男4は、六人に「しかし、あなたがたはいったい、誰なんです…?」


登場人物に名前が有りません。

男1、2など記号化され、その個性さえそぎおとされ、関係性を示す名の登場人物は、女1の母親くらいです。

無個性な人物たちが、曖昧な言葉のやり取りで、ストーリーを展開し、とんでもない場に置かれてしまう。

弁償する気はあったと言っても、無許可で他人の物を食べたとなると、窃盗という事になるのでしょうか?。

死人の残した物を、無断で食べていた…、かなりショッキングな終わり方です。

現在、「紅白歌合戦」を見ながらこの文章を書いているのですが、歌って一曲の中で物語を語り、完結します。

楽曲にならないものを作品にする、舞台にはそんな魅力がある、そう思い知らされました。

ユーミンメドレーが終わったところです。