そして俺はというと立ち上がる気力もなく、無気力の赴くままに地面に座っていた。
上機嫌な女子高生。
呆れた男子高校生。
本当に女心はわからないな。秋空というかむちゃくちゃじゃないか。
その時、二人の意識を呼び止めるチャイムが鳴った。
「や、やばい! 今の予鈴のチャイムよね?」
「ああ、たぶんそうだな」
麗奈が俺のマフラーをまといながら近づいて来る。
「そんな所で呆けてないで、ほら――」
麗奈が俺に手を指し伸べる。その先を見上げる。
青空を背負う麗奈に一瞬見惚れてしまった。
「立って!」
「お、おう」
手を掴み、立ち上がる。手はそれほど冷たくはなかった。
「放課後また来るからね」
横髪を耳に軽くかけながらベンチの下にいる黒猫に別れの挨拶を告げる。麗奈の声は聞こえてないのか、黒猫はまだ眠っている。
「もしかして走ったりするのか?」
一+一は? と訊いているような質問をする。
「そうよ!」
めんどくさいなと思うのは普通のことだろう?
「じゃあダッシュ!」
麗奈が走り出す。運動神経の良さを体で示すようなスピードとフォームで駆けだす。……相変わらず速いな。
この静かな空間が後ろ髪を引かせたのか、俺は裏庭をもう一度見渡していた。
またここに来ることはあるだろうか。なぜだかそんなことを考えていた。
「ほら! 急いでー!」
やれやれと愚痴をこぼしながら、裏庭を後にする。
寒空の下、首元の寂しさを肌で感じながら俺は校舎を目指した。