視線は逸れることはなく、じっと見られているような気がする。……何か落ち着かないな。
 すると麗奈が首に手をかけていた。それは視界の端からでも分かり、どうやらネックレスを外しているらしい。急にどうしたんだと声に出せなかったのは、その仕草に見入ってしまったからであろう。
 決して勘違いしないでほしいのが見入っているだけであって、見惚れてはいない。ああ、決してな。
 ネックレスを外した麗奈は、
「マフラー」
 とマヤ文明でも予知出来ない発言を俺にかましていいたのである。これがアニメの世界だったらクエスチョンマークが三つほど、いや四つほど頭上に表示されていたはずだ。
麗奈は取り外したネックレスを胸ポケットにしまい、怪訝な顔をした俺に背を向け、ノストラダムスでさえも開いた口がふさがらない驚愕の言葉を口にする。
「で?」
 …………は? 
 ちょっと待て。で? って何だよ。背中向けながら、で? って言う奴は初めて見たぞ。
途端、俺の体はいきおいよく前かがみになっていた。
「うわっ!」
「マフラー貸してって意味よ!」
 俺のマフラーを奪い取ることだけを考えたその手は、乱暴極まりないものだった。
「いきなりなんだよ! 最初からそう言っんぐ!」
 俺に巻かれたマフラーをそのまま無理やり外そうとする麗奈。
 目の前の女の子の神出鬼没な行動による錯乱攻撃を受けた俺。
 マフラーが口のところまで上がってきた俺は情けない声を発していたのだった。
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