狂牛病を研究している英国獣医学研究所が、牛の知能はチンパンジー並みに高いことを突き止めていたのが31日、分かった。


人間の言葉の一部は理解し、感情も豊かだと言う。


「さんざん食べてきた牛が賢いとなると、社会的な影響が大きすぎる」 との理由で、調査結果はこれまで極秘にされてきた。


「牛は動作がのろく、表情も人間から見ると、あまり何を考えているのか分からない。それで知能を過小評価していた部分があるのではないでしょうか」


同研究所のアラン・スミシー研究員(仮名)は 「今回の結果は正直言って驚きだ」 と漏らす。


同研究所は、1986年に初めて狂牛病が報告された際、いち早く飼料に混ぜられた肉骨粉が感染源であることを解明した。


しかし10年以上たっても発生のメカニズムなどが分かっていないこともあり、昨春、人間の老人性痴呆の研究などに使われる高精度の磁気共鳴診断装置(MRI)を導入した。


 この装置は、頭の外から脳のどの部分に血流が増加するかを測定することで、思考や知能などが把握できるものだ。


最初は肉体的な刺激を与えることなどの単純な実験を行っていた。


しかし、ある日、牛に装置をつけたまま、昼休みに何を食べるかを研究員同士で話していたところ、 「ハンバーガー」 の単語を聞いた際に、牛の脳の言葉を認識する領域が激しく反応した。


その後も実験を重ねた結果、「ステーキ」 「ミンチ」 「ドナドナ」 など相当数の単語を理解しているほか、トラックで運ばれる子牛を見たときには、人間の 「切ない」 という感情とよく似た血流の動きもみられた。


牧場の牛の数が減ると、前頭葉に血流が集中して 「考え込む」 状態になることから、数の認識も持っている可能性がある。


「牛は内にこもる性格のようで、社会性はない。また、草を食べていれば満足で何かを創造するなどの意欲も見られない。 しかし感情の繊細さや知能の一部はチンンバンジーやゴリラにも匹敵する」


 と同研究所では結論づけている。 


この研究結果が表面化すると、牛を食べるという行為が悩ましくなってくる。 というのも、これまで 「知能が高い」 とされるクジラや 「感情が豊か」 な犬を食べる行為はたびたび非難のまとになってきたからだ。


最近では、ソルトレーク冬季五輪のショートトラックで失格となり金メダルを逃した韓国選手について、米国テレビ番組の司会者が 「(選手は)怒っているので犬をけり倒し、その犬を食べているかもしれない」 と発言した。


国際サッカー連盟(FIFA)もワールドカップ(W杯)を前に、韓国に対し 「犬が苦痛を受けている。動物虐待だ」 と犬肉料理の追放を要請している。 


 かつて英国下院議員が 「珍しいものを食べたいなら、クジラよりお互い同士を食べ合えばいい」 と反捕鯨集会で発言したことも有名だ。


今回の研究で、牛はクジラや犬より賢いかもしれないことが分かってしまった。


前出のスミシー研究員は 「何が野蛮かの世界的な論争に火を付けてしまう恐れがある。研究所としては、慎重にデータを積み重ねたうえでしか表に出せない」 と声をひそめる。


「牛が言葉をわかっているのはうすうす気づいていました。音楽を聴かせれば乳の出が良くなるのは知られた話だが、それも感受性の豊かさの表れでしょう」


 北海道宗谷管内で30年間、酪農を続ける青豆高志さん(53)は淡々と話す。


「大昔に、犬のように要領よくしっぽを振って愛想を振りまいていれば、家畜ではなくペットになっていたのかもしれない。 思えばかわいそうな動物です。 生きるためにはウシ飼いは続けて行くしかありませんが・・・・




東京新聞 2002年4月1日朝刊より


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