空間と作品@アーティゾン美術館

 

8月某日、空間と作品@アーティゾン美術館に行きました。

 

たとえば音楽や写真の世界でも空間を意識することが重要だったりするけど、美術作品にとっての空間ってどんなことだろう?と、タイトルだけで今回もNO予備知識、YES飛び込み鑑賞です昇天

 

 

行ってみたら、会場がIKEAのモデルルームみたいになってた!!
空間と作品@アーティゾン美術館

 

石橋コレクションの数々が、おしゃれな家具調度品が並ぶ室内風の一角に飾られています。

 

リビングや書斎など、歴代の所有者や依頼主がプライベート空間で作品を愛でていた様子を擬似体験できるような展示になっていました。

 

佐伯祐三《テラスの広告》1927

佐伯祐三《テラスの広告》1927


ザオ・ウーキー《無題》1962

ザオ・ウーキー《無題》1962

 

ミニサイズのムーア可愛いニコニコ
空間と作品@アーティゾン美術館

左から:ヘンリー・ムーア《母と子(ルーベンス風)》1979/《三彩万年壺》唐時代(8世紀)中国/《幾何文台付鉢》シアルクⅢ期(4000BCE)イラン, テペ・シアルク

 

美術品は、美術館やギャラリーのホワイトキューブで見ることが多いけど、たとえば作家のアトリエや所有者の家にあった当時の写真を見たり、教会とかお寺とか遺跡とかの現地で見ると、その空間込みで作品がまたすごく違って見えたりするし、ああこれはこの場所のためのものなんだなと、本来の居場所のよさを感じたりもしますね。

 

 

このコーナーでは、手前の椅子に座ることもできました。

空間と作品@アーティゾン美術館

左から:フランソワ・ポンポン《しゃこ》1911/エットレ・ソットサス《二段組みのサイドボード(Model MS.120)》1959/三岸節子《カーニュ風景》c.1954/山口長男《累形》1958/エットレ・ソットサス《サイドボード(Model MS.180)》1959


座ってみると、こんな景色。

空間と作品@アーティゾン美術館

 

カラフルなサイドボードはイタリアを代表するデザイナー、ソットサスのもの。

家具に合う絵や、絵に合う家具を考えるの、絶対楽しいよねニコニコ

 

 

応挙のワンコも、畳に上がって眺めることができました。癒し空間。円山応挙《竹に狗子波に鴨図襖》江戸時代 18世紀

円山応挙《竹に狗子波に鴨図襖》江戸時代 18世紀

 

一般に公開された場所にあるから私たちも目にすることができるのですが、たまにはこんなふうに作品を独り占めした気分を味わってみるのも面白いですね。

 

 

 

つづいて、作品とその依頼者や所有者の関係などを紹介したコーナーへ。

海老原喜之助《素描》, パブロ・ピカソ《道化師》1905

左から:海老原喜之助《素描》, パブロ・ピカソ《道化師》1905

昭和洋画壇の巨匠・海老原のスケッチと、画家が所有していたピカソ。

 

これも空間…?と思ったけど、どうやら「作品にまつわる様々な周辺」という意味での空間のようです。


石橋財団コレクションを通して、美術品がどのような状況で生まれ、扱われ、受け継がれてきたのか、その時々の場を想像し体感してみるという展覧会なのでした。

 

 

 

最後に、そんな作品の周辺として面白かったのが額縁

山下新太郎《モンパルナスのテアトル・ド・ラ・ゲーテ》1908-1910,《リオン・ド・ベルフォール広場》1909

左から:山下新太郎《モンパルナスのテアトル・ド・ラ・ゲーテ》1908-1910,《リオン・ド・ベルフォール広場》1909

 

何年か前のルーヴルで、絵を外した額縁だけを見る展覧会があってすごく面白そうだったんだけど、空間に注目する本展でも、(絵は入っているけど)額縁に注目してみようというコーナーがあって楽しかったです。

 

 

当然と言えばそうですが、改めて見ると作品との調和や対比が素敵なものばかりですね。

自分だったら、どれが好きかな?もし自分の家に飾れるならどれがいいかな?と考えて見たりもしました。お気に入りをいくつか並べてみます。

 

まず目にとまったのが、藤田嗣治!

藤田嗣治《ドルドーニュの家》1940

藤田嗣治《ドルドーニュの家》1940

シャビーシックな風合いが素敵だし、乳白色の作品とすごく合ってる!

それもそのはず、藤田は額縁も自作していましたね。

 

藤田嗣治《猫のいる静物》1939-40

藤田嗣治《猫のいる静物》1939-40

 

 

ルオーのこちらも素敵!無骨で清い感じがピッタリ。

ジョルジュ・ルオー《ピエロ》1925

ジョルジュ・ルオー《ピエロ》1925

 

 

パブロ・ピカソ《ブルゴーニュのマール瓶、グラス、新聞紙》1913

パブロ・ピカソ《ブルゴーニュのマール瓶、グラス、新聞紙》1913

この時期の作品によく使われたスタイルで、「ピカソ額」と呼ぶこともあるそうです。

キュビスム仲間のジョルジュ・ブラックも、似たような額縁を使用。

 

 

青木繁の名作も、よく見たらめっちゃ素敵な額縁だったのね!

【重文】青木繁《海の幸》1904

【重文】青木繁《海の幸》1904

 

お魚うお座

【重文】青木繁《海の幸》1904 額縁拡大図

 

 

…などなど。

自分は素朴なものやラフな質感が好みなので、チョイスも偏ってしまいましたが、モダンなものやゴージャスなものなど様々ありました。楽しかったです🖼️もいもい

 

 

 

額縁の様式

作品を保護し、その魅力を引き立て、インテリアの延長線として建物の洋式とも深く関わる額縁。

時代や国で変わるそのデザインについても紹介されていました。

 

▼様々な展開を見せたフランスの額縁

様々な展開を見せたフランスの額縁

①アルフレッド・シスレー《サン=マメス六月の朝》1884 ②ウジェーヌ・ブータン《トルーヴィル近郊の浜》c.1865 ③ベルト・モリゾ《バルコニーの女と子ども》1872 ④クロード・モネ《睡蓮の池》1907

  1. ルイ13世様式葉が連続する模様(17世紀前半)
  2. ルイ14世様式フレームがより幅広で、模様も複雑に。四隅のアカンサスも特徴的(17世紀中頃〜18世紀初頭)
  3. ルイ15世紀様式曲線的で立体的な彫りに。四隅と中央に貝殻モチーフ(18世紀中頃)
  4. ルイ16世様式シンプルになる。ロココの反動か、直線的で控えめな装飾(18世紀後半)

 

▼お国で変わる額縁のデザイン

様々な国の額縁

①カミーユ・コロー《イタリアの女》1826-28 ②シャイム・スーティン《大きな樹のある南仏風景》1924 ③レンブラント・ファン・レイン《聖書あるいは物語に取材した夜の風景》1626-28 ④トマス・ゲインズバラ《婦人像》

  1. 額の体裁が整った16世紀イタリア、に似たデザイン。
  2. 重厚で四隅の模様が特徴的なスペイン様式
  3. オランダ17世紀頃のデザイン。
  4. イギリス18世紀中頃、繊細な彫りのデザイン。取り扱い注意。

 


 

世界のアーティスト250人の部屋 人生と芸術が出会う場所 [ サム・ルーベル ]

 

空間と作品
空間と作品@アーティゾン美術館
会期:アーティゾン美術館
会場:2024/7/27/土〜10/14/月(祝)
料金:一般1500円(WEB1200円)

 

 

美術館の展示室に整然とならぶ美術品、それらは、今日誰もが鑑賞することのできる公共的なものとなっています。ですが、その美術品が生まれた時のことを振り返ると、それは邸宅の建具として作られたり、プライベートな部屋を飾るためにえがかれたりと、それを所有する人との関係によって生み出されたものであることが分かります。また、時を経る間に、何人もの手を渡り、受け継がれてきたものもあります。この展覧会では、モネ、セザンヌ、藤田嗣治、岸田劉生、琳派による作品や抽象絵画まで、古今東西、様々な分野の作品からなる石橋財団コレクション144点によって、美術品がどのような状況で生まれ、どのように扱われ、受け継いでこられたのか、その時々の場を想像し体感してみます