テルマエ展@パナソニック汐留美術館

 

 

4月某日、テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本@パナソニック汐留美術館に行きました。

 

昨年から各地での本展の様子をSNSで眺めていて、巡回を楽しみに待っていた楽しかったー!

 

 

古代ローマと日本の「お風呂文化」を、絵画や彫刻、考古遺物でたどる展覧会。

お風呂を中心に古代ローマの暮らしが紹介され、また日本のお風呂の歴史にも触れられていて、その組み合わせが面白かったです♨️

 

ちょうど、古代ローマから現代日本のお風呂にタイムスリップしてしまったルシウスの気分です。

「テルマエ・ロマエ」ルシウス テルマエ展@パナソニック汐留美術館

大人気マンガ『テルマエ・ロマエ』の著者ヤマザキマリ氏が協力する本展、展示のあちこちに、主人公ルシウスも登場していました。

 

 

 

出かけたのは4月半ばの平日午前。

広い会場ではないので時々つまるけど、混雑はまだ無し。

東京は6月9日まで、その後は神戸に巡回予定。

 

 

 

古代ローマの公衆浴場(テルマエ)

テルマエ再現コーナー テルマエ展@パナソニック汐留美術館

会場にはテルマエを再現したコーナーなんかもありました(一部撮影OK)

 

巨大浴場施設カラカラ浴場の模型や再現映像なども展示。
カラカラ浴場の模型 テルマエ展@パナソニック汐留美術館

 
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←暴君カラカラ帝によって、216年に建設されたカラカラ浴場

その巨大さは東京駅と同幅ほどにもなる。迷子になりそうね!

 

 

古代ギリシャの運動場(ギュムナシオン)医神の神域に設けた入浴施設をルーツに、大衆の娯楽施設や身分差を超えた社交場として発展したテルマエ。

図書館劇場を併設したものまであって、ハイパーデラックススーパー銭湯。
 
テルマエの入浴料は無料~1/4アスほどで、庶民でもほぼ毎日入浴できる値段だったそうだ。※1アス銅貨=ワイン1ℓが買えるほど。
 

テルマエ展@パナソニック汐留美術館 テルマエ展@パナソニック汐留美術館

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ギリシャのギュムナシオンの名残で、運動場が併設されている。まずはここで軽い運動をしてからお風呂へ。
 
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ギリシャの運動はガチだったが、ローマのそれはお風呂をより気持ちよく入るための軽いものだったそうだ。
あれか、この後の一杯のためにゴルフするお父さんみたいな(?

 

 

▼カラカラ浴場平面図

入浴スタイルは、冷浴→温浴→熱浴→マッサージの順で行う循環浴。※逆順説あり
 


浴場は美しいタイルや大理石の彫刻で飾られ、庶民が美術を楽しめる場所でもあった。

《ヘラクレスのトルソ》1〜2世紀 個人蔵 テルマエ展@パナソニック汐留美術館の覚書

《ヘラクレスのトルソ》1〜2世紀 個人蔵

 

​ギュムナシオンの守護神でもあった英雄ヘラクレス

獅子狩りを象徴するライオンの毛皮には、まだ赤い塗料が残っている。

 

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テルマエに飾る彫刻は、こうした浴場にまつわる神々のほか、皇帝テルマエ建設者などが好まれた。

神々では特にディオニソス、愛と美の神(ヴィーナス、キューピッド、三美神)、癒しの神(アスクレピオス、娘のヒュゲイア)など。

 

 

 

パンとサーカス

当初は質実剛健な農業生活が中心だった古代ローマは、しかし前2〜3世紀になると貧富の差が拡大。高まる大衆の不満のガス抜きとして、公衆浴場*1や競技*2、演劇*3といった娯楽施設や見世物を提供した。


*1:水道施設の維持・管理には大量の燃料や奴隷が必要であり、中世には廃れた。

*2: 戦車競争や剣闘士などの祝祭行事であった競技は、大衆支持を維持するための政治目的へと変化した。

*3: 演劇はアテラナ(木や革でできた仮面をつけた男性が即興)ミムス(女優も登場、好色場面あり)パントミムス(台詞なし)などが行われた。

 

 

 

江戸の銭湯

文窓・弄花《七湯の枝折》文化8年(1811)箱根町立郷土資料館 テルマエ展@パナソニック汐留美術館

文窓・弄花《七湯の枝折》文化8年(1811)箱根町立郷土資料館

 

古くから神聖な儀式や政治目的、医療や社交場としてなど、多様な役割を持った浴場。

 

日本のお風呂も信仰と関わり深く、人工的な浴場は仏教と共に発展した。

寺院内に浴室が作られ、汚れと穢れを清める「施浴」として庶民に解放したのが銭湯のルーツとも考えられている。

 

そんな温泉寺の縁起も面白い。

内藤喜昌筆《有馬温泉寺縁起絵巻》江戸時代 中世絵話集め(兵庫県立歴史博物館)よりスクリーンショット

 

行基というお坊さんが、行きずりの老いた病人を介抱する。

体の膿を舐め、ウジを吸い取ってまでしてやると、その病人は薬師如来に姿を変え、温泉を復興するよう伝えた。それが今に続く有馬温泉となったとさ。

 

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膿を吸うと仏が登場する話は、ほかにも《洗湯手引草》で見られた。

光明皇后が千人の体を洗い、病人の膿まで吸い出してやると阿しゅく仏に変身。

 

 

▼江戸時代後期の湯屋

三浦宏《湯屋模型》1980年代 個人蔵 テルマエ展@パナソニック汐留美術館

三浦宏《湯屋模型》1980年代 個人蔵

 

入浴文化が庶民にも普及したのは江戸時代。

古くは蒸し風呂が一般的だった入浴方法は、やがて少量のお湯で半身浴をするようになり、江戸時代後期に湯屋が整備されると今のような湯に浸かるスタイルとなった。

 

 

男女に分かれた入口から番台脱衣場洗い場へと続く。三浦宏《湯屋模型》1980年代 個人蔵 テルマエ展@パナソニック汐留美術館三浦宏《湯屋模型》1980年代 個人蔵 テルマエ展@パナソニック汐留美術館

2階は男性専用の休憩室で、男湯のみから上がれる構造になっている。

 

 

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医療が不十分だった江戸時代、人々は温泉療法に関心が高く、また東海道など交通網が整備されたことで、湯治旅も増加した。

当時は関所が置かれて人の移動が厳しく制限されていたが、湯治旅は特別に認められていたので、人々はこれにかこつけて旅を楽しんだ。

 

そして、現代のように家庭の内風呂が一般的になるのは戦後。だいぶ最近なんですね!

 

 

…などなど。

どうしても長い。しかもたぶん続く♨️😇♨️もいもい

 

山本高樹・町田忍《明神湯》2008 町田忍蔵

 


 

テルマエ お風呂でつながる古代ローマと日本 [ 青柳 正規(東京大学名誉教授・山梨県立美術館館長) ]

 

テルマエ展
お風呂でつながる古代ローマと日本

会場:パナソニック汐留美術館
会期:2024.4.6.土~6.9.日
料金:一般1200円

【巡回予定】

神戸市立博物館👉2024.6.22.土~8.25.日

 


人類史上に輝く繁栄を誇った古代ローマ。なかでも日本人が深い関心をよせるものの一つがテルマエ(公衆浴場)であり、ヤマザキマリ氏による漫画『テルマエ・ロマエ』はテルマエへの親近感をより一層高めました。本展では、同漫画の主人公ルシウスが案内人となり、古代ローマのテルマエとともに、日本の浴場文化も紹介します。ルシウスが浴場をとおして日本と古代ローマを往復したように、それぞれの浴場文化を体感することのできる機会となるでしょう。