5月某日、ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築@東京シティビューに行きました。
ヘザウィック・スタジオは、ロンドン五輪の聖火台や上海万博の英国パビリオン、Google本社ビルなどの斬新なデザインで知られる、いま世界が最も注目するデザイン集団のひとつ。
彼らが手がけた主要プロジェクト28件を、日本で初めて紹介する展覧会です。
森美術館で開催中の「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」を観に行った日、本展もあわせて鑑賞。
6月4日に終了してしまうこちらからメモです。
人間らしさを重んじ、人々が感情や感覚を共有できる空間を目指して、建築を革新するヘザウィック・スタジオ。
自分は古い建物や民族建築などが好きで、現代建築にはあんまり関心が向かなかったんだけど、この展覧会は面白く、これをきっかけにもっと色々知りたくなりました。
なぜ関心が薄かったのかも、ヘザウィックがTEDで語っていた面もあると思う。
「たった40年でスクラップ&ビルドを繰り返すのではなく、愛着を持って1000年続く建物を」「無個性で機械的な建築ではなく、多様性と人間性を取り戻した空間を」といったお話に共感しました。
▼会場で流れていたTEDスピーチ動画
デザインと建築を横断しながら人間性の回復を目指すって、なんだかルネサンスみたいだなと思ったら実際、彼は「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」などと称されたりもしているそうだ。
そんなヘザウィック・スタジオが手がけた建築は、これ建物なの?中はどうなってるの?と好奇心をかき立てる独創的なデザインがいっぱいだ。
それらは、無駄がなく機能的だが画一的な直線の建物とは違う、自然界にあるような曲線や有機的な形なのが面白い。
たとえばこれは、内部がトウモロコシの粒状にくり抜かれた建物。
ツァイツ・アフリカ現代美術館の模型
築100年の穀物用サイロを再利用して作られた、アフリカ初の現代美術館。
南アフリカ全土からのトウモロコシを備蓄してきた建物の歴史をふまえて、人々が集い、対話し、楽しむための新たな形に蘇らせた。
マンハッタンはハドソンヤード地区のランドマーク、「ベッセル」。
階段と踊り場しかない、モニュメントのような風変わりな展望台。
なんだかパイナップルみたいだと思っていたけど、インドの階段井戸から着想を得ているらしい。そうだったんだ!🍍
これね👇すごいよね!
インド最大の階段井戸チャンド・バオリ Image: Chainwit. via Wikimedia Commons
同じくNYの公園「リトル・アイランド」は、蓮の実みたいな形のプランターが無数に連なる。
ほかにも1000本の木々に包まれた上海の複合施設「サウザンドツリーズ」や、庭園のようにくつろげる医療施設「マギーズ・ヨークシャー」など、植物を取り入れた建築楽しい。
上海万博の英国パビリオン。
英国パビリオン外観(上)と内部(下)の模型。
6万本ものアクリルの棒が刺さった、タワシみたいな不思議な建物。
しかもこれ、見た目が独特なだけじゃなくて「種の神殿」なんだって!
Image: stefano meneghetti via Wikimedia Commons
建物内部から見ると、アクリル棒の先端ひとつひとつに植物の種が埋め込まれている。その数25万個!
英国の種子銀行「ミレニアムシードバンク」から着想を得たとのこと。
最後は、シンガポール南洋理工大学。
学生たちが自然と集いやすいよう、廊下をなくし、建物には正面も裏口なく、各棟がぐるりと向かい合うようなつくりになっている。
Image: Supanut Arunoprayote. via Wikimedia Commons(左)/ トーマス・ヘザウィックTEDトークよりスクリーンショット(右)
これ見て「宮崎駿が解釈した荒川修作提案の住宅」をふと思い出した。
これも円形の住居が円状に建てられ、人々が集える空間を考えている。
「直線や水平ばかり追求したあげく、人間まで四角にしてしまった」とヘザウィックと共通するような話も…。
あと、縄文時代のムラも思い出した!
山梨県立考古博物館の模型
広場を囲むように円形に家が立ち並ぶ環状集落は、定住性が高かった東日本で主に発達したそうだけど、円村は他の国でも古くから見られ、それは家畜を守るためだったりしたようだ。
そういえば、めっちゃ円の福建土楼なんてのもあったな!
Image: Gisling via Wikimedia Commons
円状にすることで、外敵からの防御を強め、共同体の結束を強めたとされる。
面白いな円。いろんな世界の円の住まいを見てみたくなった。
…と、また脱線し出したこのへんで!もいもい
パラパラ見るのが楽しい建築ビギナー本。
世界各地100件の現代建築を解説。
こんな建物だれがどうしてつくったの? [ ジョン・ズコウスキー ]
ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築@森美術館
会期:2023.3.17.金~ 6.4.日
会場:東京シティビュー
料金:平日¥2000(オンライン¥1800)休日¥2200円(オンライン¥2000)
1994年にロンドンで設立されたヘザウィック・スタジオは、ニューヨーク、シンガポール、上海、香港など世界各地で革新的なプロジェクトを手掛ける、現在、世界が最も注目するデザイン集団のひとつです。
創設者トーマス・へザウィック(1970年、英国生まれ)は、子どもの頃、職人が作った小さなものに宿る魂に心を躍らせていたといいます。建築という大きな建物や空間にも、その魂を込めることはできるのか。この問いがヘザウィック・スタジオのデザインの原点となりました。
すべてのデザインは、自然界のエネルギーや建築物の記憶を取り込みつつ、都市計画のような大規模プロジェクトもヒューマン・スケールが基準となるという信念に基づいています。その根底には、プロダクトや建築物というハードのデザインよりも、人々が集い、対話し、楽しむという空間づくりへの思いがあるのかもしれません。
モノやその土地の歴史を学び、多様な素材を研究し、伝統的なものづくりの技術に敬意を払いながら、最新のエンジニアリングを駆使して生み出される空間は、誰も思いつかなかった斬新なアイデアで溢れています。
新型コロナウイルスのパンデミックを経て、わたしたちが都市や自然環境との関係性を見直すなかで、ヘザウィック・スタジオのデザインは、来る時代に適う、これまで以上に豊かな示唆を与えてくれることでしょう。
本展は、ヘザウィック・スタジオの主要プロジェクト28件を天空の大空間で紹介する日本で最初の展覧会です。試行錯誤を重ね、新しいアイデアを実現する彼らの仕事を「ひとつになる」、「みんなとつながる」、「彫刻的空間を体感する」、「都市空間で自然を感じる」、「記憶を未来へつなげる」、「遊ぶ、使う」の6つの視点で構成し、人間の心を動かす優しさ、美しさ、知的な興奮、そして共感をもたらす建築とは何かを探ります。