やっと髪を切りに行けて、さっぱりハッピーな今日この頃の私ですこんにちは。

久しぶりに100万発殴られたレオンのマチルダになりました。

 

 

動物の絵@府中市美術館の覚書のつづきです。

 

今日は、「涅槃図」と「ノアの箱舟」についてメモ。


たくさん動物が出てくる宗教画として、会場のキャプションで仏教の「涅槃図」とキリスト教の「ノアの方舟」を並べて挙げていたのですが、このふたつを見比べるというのは思いつかなかった視点で、興味深かったです。

 

涅槃図は、お釈迦さまが入滅する場面に、動物たちが集まってくる。

ノアの方舟は、堕落した地上が滅ぼされる場面に、動物たちが集まってくる。

状況は異なるけど、大きな大きなものが失われる時に、たくさんの動物がそばにいますね。

 

 

 

▶︎涅槃図とノアの方舟

 

涅槃図では、特に西来寺の「八相涅槃図」が面白かったです。

 


 

西来寺のウェブサイトに、作品の大きな画像があります!

 

入滅されたお釈迦さまの周りに、実在or空想上を問わず沢山の動物たちが集まる涅槃図ですが、こちらは海の生き物まで集合!

こまごま面白くて、ずっと見てしまいます。

 

クジラが珊瑚をくわえてる。伊勢海老もいる😄

「八相涅槃図」部分 西来寺 享保12年(1727)

 

周囲比でやたら大きなムカデとか、ミニサイズの龍とか、実際のサイズと関係なく、大小さまざまな大きさで描かれているのも面白いです。

 

 

 

こちらは17世紀の「ノアの方舟」

ルーラント・サーフェリー《神の救済に感謝するノア》1625年 ランス美術館

 

オランダ出身の宮廷画家サーフェリーは、鳥獣画や風景画に優れ、ドードーを描いたことでも知られる画家。

 

ということは、ドードーがいる!右下!!

 

ドードーいるのに!ドードー…ぐすん

今では失われたドードー鳥が、大洪水を生き延びた動物たちの絵の中にいるのが、なんだか余計に悲しい。

ドードーが人類に滅ぼされたのは、この絵が描かれて60年も経たずしてのことでした。


 

 

 

▶︎動物が多い日本の涅槃図

 

多くの動物が描かれていることが特徴的な日本の涅槃図。

 

 

▶︎釈迦とイエスの死と生誕

※以下は展示外です。

 

お釈迦さまが亡くなられた場面を描いた涅槃図ですが、西洋のキリスト教絵画にも、人々がイエスさまの死を悲しむ「キリストの哀悼」というテーマがある*3ので、改めて見てみました。

 

 

ジョット・ディ・ボンドーネ《死せるキリストへの哀悼》c.1305 スクロヴェニー家礼拝堂 

 

時代が下るにつれ動物が増えていった涅槃図ですが、キリスト哀悼図はというと、動物はどの時代にも見られません。(もしあったら教えてください!

 

キリストの死には、聖母マリアや弟子たち、そして天使が集まっています。
なかでもジョットの天使は、涅槃図さながらに悲しみを大きく表していて、ほかの絵ではあまり表情がない天使ばかりなので印象的です。


 

 

一方、キリスト降誕の場面には動物が寄り添っています。

ベルナルディーノ・ルイーニ《キリストの降誕》1525 ベルリン絵画館

 

家畜小屋で生まれたから、馬や牛が描かれています。

中には羊や鳥、犬などが集まっているものも。

 

どの絵でも牛ちゃんたちが優しい目、あるいはガン見で赤ちゃんイエスを見つめているのが好きです。

 

ガン見系。

バルトロ・ディ・フレディ《羊飼いの礼拝》1374 The Met

 

 


翻って釈迦の生誕では、2匹の龍が描かれた誕生画が見られます。

Life of the Buddha: The Birth of the Buddha 室町時代 15世紀初頭 The Met 

 

 

釈迦が生まれた時、龍が天から清浄水をそそいだというお話から。*4

水がピーンと釈迦一直線なのが面白い😄


北斎の釈迦誕生図もある!お水ザーザー!!

 

 

 

 

…などなど。

仏教美術とキリスト教美術、それぞれで見ることはあっても、そういえばあまり対比して見たことがなかったので、今回よい機会でした。

様々な共通点と相違点。色々な視点のひとつとして、知っていけるといいなと思います。もいもい馬

 

 


*1神戸女子大学古典芸能研究センター(PDF)

*2 三重県立美術館

*3 テーマは類似するも、前者は儀礼の本尊としての用途、後者は物語の一場面として伝達するそれの違いはあり。

*4 Wikipedia

*参考文献:守屋正彦著「すぐわかる日本の仏教美術」/辻惟雄著「日本美術の歴史」/文化遺産データベース/浜松市文化遺産デジタルアーカイブ/コトバンク>鎌倉時代の美術/Wikipedia>仏教絵画/Wikipedia>鎌倉文化

 

 

▶︎府中市美術館 開館20周年記念 動物の絵:日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり

古くから、人々は動物の絵を描いてきました。美しい造形、ふしぎな生態、かわいらしさ……人とはちがう命のあり方に心ひかれ、それを形にしようしてきたのです。中でも、日本は動物の絵の宝庫。かわいい、面白い、美しい……理屈抜きに楽しめる作品が山ほどあります。本展では、西洋の絵とも比べることで、この土壌を育んだ背景や歴史を探ります。