Image Credit: Wikimedia Commons

 

 

 

本日は、映画de名画!

映画『ミス・ポター』に登場する名画です。

 

世代を超えて世界中で愛されている絵本シリーズ「ピーターラビット」の作者ビアトリクス・ポターの半生を、ロマンス濃いめに描いた作品。

 

 

母に胸ぐら掴まれピーター

Image Credit: Wikipedia

 

 

そういえば今、映画『ピーターラビット2』が公開中ですね。

私も以前に「1」をネトフリか何かで観ましたが、あのピーターが、とってもハリウッディなドンチャン騒ぎに作り替わってて、ある意味感心しましたね🤯

 

 

そんな、ハリウッドデビューも果たすスーパーうさちゃんの生みの親ポターは、裕福で孤独で自由のない典型的なヴィクトリア朝の家庭育ち。

女性が就ける職はとても限られ、ましてや良家のお嬢様が商売なんてはしたない!という20世紀初頭に絵本作家、企業家、農場経営者、そして自然保護運動家として活躍した女性です。


 

 

 

うさぎ『ミス・ポター』に登場するギリシャ神話の名画

では、『ミス・ポター』に出てくる名画です。

 

ヤコポ・アミゴーニ《エウロペの略奪》1729頃 ナショナル・トラスト 

 

 

好色ゼウスの浮気シリーズの中でも特に知られたひとつで、ティツィアーノをはじめ多くの画家に描かれているテーマ。

本作を描いたアミゴーニは後期バロック/ロココ期イタリアの画家で、登場人物は18世紀様のドレスを着て描かれています。

 

ティツィアーノ版

ティツィアーノ《エウロぺの略奪》1559-1562 イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館

 

全知全能の女たらしゼウス神は、一目惚れしたフェニキアの姫エウロペをモノにするため、白く美しい牡牛に変身。

「ほれ、珍しかろ?おとなしいもんやで?乗ってみんか?牛」と姫に近づき、誘拐する場面です。

 

そうしてつい気を許した姫が背にまたがるや、猛烈な勢いで走り出すゼウス牛。A5ランク。

姫を乗せたままヨーロッパ中を駆け回ったあげく、私がいつか絶対行くつもりのクレタ島へと連れ去り、三人の子を孕ませた。

このことから、エウロぺの名は「ヨーロッパ」の語源となったそうな。



 

 

…という(長い)、名画が登場するシーンがこちらです。

 

ギャラリーを歩きながら、ポター(右)と友人ミリー(左)が結婚について語り合う場面。

“婚期”を過ぎた独身主義同士、意気投合した二人は会話が弾み、壁の絵画たちには目もくれません。

 

 

そんな中、カメラは唯一この絵をアップに。​​​​​​意味深!

 

その時ミリーが語っていた言葉は、「結婚をすれば家庭の奴隷になり、恐ろしい出産を強いられる。女性は独身の方が幸せ」。

 

富裕層の女性は嫁いで「家庭の天使」になるべきとされた時代に、かなり大胆な意見を主張するミリー。

現代より女性の権利もなく、出産のリスクも高く、それでも他に道がなかったからこその切実な思いだったのかもしれない。

天使であるべき抑圧、天使になれない「余った女」の社会問題化、そして自立を目指した「新しい女」の出現と彼女らへの偏見など、中産階級女性の生き方が問われた時代であったようです。

 

 

けれど、いざポターがプロポーズを受けると、明日にでも結婚しろ!愛されるチャンスを逃すな!と背中を押すミリー。

自分の考え方を持ち、友人の幸せを祝福し、辛い時には寄り添って、ちょっと奇抜だけどめっちゃいい人を、さすがのエミリー・ワトソンが演じています。

 

 

 

 

うさぎ『ミス・ポター』のロケ地、オスタリーハウス

ちなみにこのシーンは、ロンドン郊外にあるオスタリーハウスに実在するギャラリーで撮影されたそう。

 

Osterley House Image Credit: Wikimedia Commons

 

130mものロングギャラリーに、邸宅を所有していたチャイルド家の絵画コレクションが展示。
ナショナル・トラストが運営する歴史的建築で、しばしば映画のロケ地にもなっているようです。

 

 

劇中には他にもユーツリー・ファームダーウェント湖などなど、ポターゆかりの地が登場しています。

 

ケズィック近くの北岸から見たダーウェント湖


 

 

 

うさぎビアトリクス・ポター資料館

 

一方、こちらは日本のポター・スポット。

 

ポターが愛した湖水地方のヒルトップ・ハウスをそっくり再現した資料館が、埼玉県東松山市にあります。

 

 

実在のヒルトップ・ハウスと、その玄関に立つビアトリクス・ポター

Image Credit: Wikimedia Commons

 

 

ピーターが駆けてきそうな庭もあるよウサギ

 

「ピーターラビット」の初版・私家版がすべて揃うのは世界でもこの資料館だけ。

(繰り返し読まれることが多い絵本は消耗が激しく、状態の良い初版はとても貴重なのだそう)

 

そのほか直筆の手紙や原画、絵皿や人形などのグッズ、さらにはアメリカで出回った海賊版まで展示されています。

 

ちなみにピーターの海賊版は日本でも、1971年に福音館書店から正式に出版されるまで、「ピーター兎」「ピータローうさぎ」「イッポンマツピョンスケ」などと題して多々出ていたようです。なんだよイッポンマツピョンスケって!

 

 

以上でございます。

 

 

 

 

 

 

ネザーランド・ドワーフもいもいネザーランド・ドワーフ

 

 

 

 

 

ウサギちょっとネタバレ追記

書きながら再視聴してて知ったんですけど、劇中、ポターの婚約者が「ダンスを教えましょう」というローレライ風の曲を歌うシーンがありますが、エンドロールで流れる同じ歌は、女性ヴォーカルで「あなたがダンスを教えてくれた時」と歌詞を変えた返歌になっていたんですね!

 

しかもその内容が【いつかまた恋もするかもしれない、でもあなたがダンスを教えてくれた時のことは忘れない】というような、ポターのその後の心情を思わせるものになってて切ないうおーん。

 

歌詞にリンクして劇中シーンが差し込まれるのやゔぁいえーん

 

 

 


参考文献:National Trust CollectionsMiss Potter Film Locations in England/Almost Ginger, ベアトリクス・ポターの生涯を描いた映画 「Miss Potter」のロケ地を訪ねる/NewsDigestピーターラビット/ラピータの部屋

 

 

ビアトリクス・ポターを訪ねるイギリス湖水地方の旅 ピーターラビットの故郷をめぐって [ 北野佐久子 ]

ビアトリクス・ポターを訪ねるイギリス湖水地方の旅 ピーターラビットの故郷をめぐって [ 北野佐久子 ]