夜の高速は、光に包まれる。作られた道が造られた気持ちで塗り替えられる。
君に会いに行こう。ちょっぴり遠い道程も、ほんの少しのスパイスで
刺激的な料理に変わってく。
急いでも、急がなくてもキラキラ輝く星たちの。
そっと輝く星たちの優雅な一言ぽつりぽつり。心をくすぐる。
あの日聞いてた曲をBGMに、君の顔を思い浮かべる。
何気ない会話に含んでた会いたいのキーワード、きっとそれはオレにしか気づけない。
突然の電話も、突然の告白も。そこに追い詰められた勇気も
初めて君を見た新幹線のホームで形になった。
不安そうな瞳、それを隠すように乗せてるメガネ。
赤いフレームがくすんで見えたのは、その瞳のせいだろう。
まるで意味の無い会話も、一つ一つが踊るのは
そこに君がいたから。
前を見失ってたオレが、希望を無くした君へ全力の言葉を投げる。
無くした物が大きくて、得る物が大きい事に気づけない。
少しだけ歩こう、ここから逃げ出そう。でも走らないで。
やっぱり歩く方がオレ達にはお似合いなんだ。
できるだけゆっくり進もう。逃げ出した事を忘れない為にね。
ちらりと周りを見渡して、君は言った。皆が私達を追い越してく。
そうさ、それでいい。
見える人は先へ、見えない人は後でいい。
その役割は後でついてくる物なんだから。
不思議な顔をして少し笑った君を見て、心からオレは和んだ。
それから無口になった二人は、夜の街をそっと歩いた。
これからどうする。その言葉を飲み込んだオレには話す言葉が見つからなかった。
そんなオレを見透かすように君は話し出した。
仕事の事、過去の恋愛の事。
ひとしきり話し終えた後、少しの沈黙が流れ君が言った。
助けて欲しい。そして家に行きたい。
オレは躊躇する。確かにこの時間では、もはや選択肢は限られる。
それが最良の選択かどうかは分らない。
しかし断る理由もオレには無かった。
次の日、君は忽然と消えていた。まるで夢のように感じた。
何故消えたのか、答えは出せなかった。
幾度と無く掛け続けた携帯も、彼女の声を聞くに至らなかった。
オレは考え続けた。あの夜オレは、不覚にも聞き流した彼女の一言。助けて欲しい。
それが、どういう意味だったのか。
とても重要な意味が有ったような。今更ながらに気づいた。
そして数日後、突然の着信が響いた。
平日の夜中に高速を走る車は少ない。
BGMと、エンジン音が心地いい。何より君に会えるという感覚が、長い道程を幸せな気分に変えている事は明白だった。
彼女の住む街は港の有る有名な街だった。
海のすぐ近くには小高い山が広がる。
高速を降りた時刻は午前7時を表示していた。
住所を頼りにいくつかの町を通り過ぎた。
目指す地名にたどり着いた時、オレはちょっとした疲労感と
彼女に会える楽しさ、そして初めて見る街並みに興奮していた。
急な坂道を登り、並木道を走り抜けた瞬間。目の前に大きな公園が広がった。
公園を囲むように走る道沿いに彼女の住む大きなマンションは建っていた。
その時、素直に素晴らしい場所だと感じた。
オレの住む街には感じられない高級さや上品さが漂う。
その雰囲気にしばし圧倒されたオレは、急に怖気づいた。
マンション付近まで進む勇気を無くしたオレは、公園の道沿いに車を止め
しばらく散歩する人達を眺めていた。
その時、携帯に着信が来た。それは彼女からの着信だった。
予想しない着信に、すぐに反応できなかったオレは
数回のコールを聞いてから、電話に出た。
彼女は10階を見て、確かにそう言った。到着している事が何故わかったのか。
他にも色々な疑問が一瞬浮かんできたが
オレの目はマンションの10階を急いで数えていた。
そこには小さく手を振る君が居た。
To be continued