ロールシャッハ歴 -20ページ目

ロールシャッハ歴

でかすぎる夢だ。

同じ時間の中、同じ物を眺め、同じ事を考える


そうして同じ感覚の中、同じ物を愛でる気持ちを持つ。


静かな、力強い営みにやがて溶ける雪も有ろう。


困難を繰り返す生活には、困難を共にする友がいる。


何かに報われる事を望もうと、また報われている事を噛み締めようと


夕暮れを愛し、月を愛し、昇り来る朝日を愛せば


やがて空に愛される。


誰かと一緒に朝を迎えるなら、


迎える物全てを愛さなければならない。


一緒に空を眺めれば、一緒に空から愛される。


寒さも、長くは続くまい。


溶けた雪が流れ出す、流れた後に小さな芽を見付けるのだろう。


新たな夢は、確かな愛に支えられ


大きく道を照らす。


慌てる事等何もない、ゆっくりと確実に


その人と一緒に進めばいいのだから。



空港に降り立った私は、雪を眺めている。


どうやら一人のようだった


とぼとぼ、タクシー乗り場に歩いて行けば


すれ違う人が二人いた。


最初にすれ違った一人は、とても背の高い女性で顔は分からない。


もう一人は、スーツを着た男性やはり顔は分からないようだ。


どちら共に無言ですれ違う。


私は、雪に足を滑らせ転んでしまう。


体半分に雪を、まぶしたまま立ち上がった。


タクシー乗り場は、まだ見えない。


歩きだした私の後ろから犬が追い越して行く。


犬は立ち止まり振りむいて私を見る。柴犬のようだ。


そうして追いついた私の、雪のついた足を嗅いだ。


それから犬と一緒に歩き始める。


私は、どうやってこの犬をタクシーに乗せようか悩んでいた。


タクシー乗り場に到着した時、やはり犬は乗せれないと拒否される。


仕方無いと諦め、一人タクシーに乗り込んだ。


何故だかタクシーには、すでに一人の女性が乗っている。


少し緊張した私は、軽く挨拶を交わした。


待っていてくれたのですか?そう聞いた私に彼女は軽く会釈を返す。


取りとめの無い話しを二人でしたが内容は、記憶していない。


それは記憶したくなかった事かも知れないし、ただ思いだせないだけかも知れない。


タクシーが止まった。駅のようだが数台のタクシーが停まっているのみで人の気配はしない。


彼女は先に降りてと、私を促した。


お金を払おうとした私の体を軽く押して、その必要は無いよと言う。


そうだ、私は財布を持っていない。その時始めて気付いた。


彼女はお金を払うと運転手と軽く会話し降りてきた。私は彼女を好きになった。


先に歩き出す彼女の背中を追いかけた。


その時、空港で別れたはずの、あの犬が前から歩いて来る。


そうか、これは夢だと気付く。


また犬と歩きだした、今度は犬と彼女と並んで歩く。


私は、無性に手を繋ぎたいと思うが、その勇気は持ち合わせない。


やがて広い公園が見えてくると、二人と一匹は立ち止まった。


ここが私たちの帰る場所と告げられる。


私は尋ねた、ここには愛が有りますか?


彼女は、黙ったまま私を見た。


聞いた事を後悔していた私に、犬が一つだけ吠えた。


そうか、愛は人間だけの物でも無いんだと思った。


では帰ろうか、やがて大きな愛に包まれる事を確信した私は犬を抱えた。


そうして彼女の手を引き、洋々とした気分で公園へと踏み込んだ。

気分がすぐれない年の瀬に


街路樹が続く、夜の赤道を歩いた。


整然と並ぶ木々達も、私に何の興味も示さない。


人気もまばらなこの時間、暗闇に浮かぶ街灯の明かりが目に入る。


遥か遠くに見えるようで、けれども私の足元を照らすには十分だ。


私は歩く速度を速めた。


そうすれば、街灯はどんどん近くなった。


これは、どうしようも無い事実だ。


遅く歩けば街灯までの時間長く。


速く歩けば街灯までの時間は短い。


これは昔に生きた人で有っても、何百年先に生きる人でも有っても


おそらく同じ事を感じるだろう。


それは1+1が2で有る事と変わらない。


しかし、事実と真実は違う。


オレンジが二つと、リンゴ二つが同じだとは誰も思わない。


それでも、どちらともが二個で括られる事には変わりがない。


そうして、これが人で有れば話しはもっと複雑だ。


こちらの二人は、十人に勝る存在を、周囲に示し。


そちらの二人は、一人にも劣る存在を、周囲に示す。


だが事実は、どちらも二人で有る。


真実とは、そのような所に、そして人の隙間に隠される。


何故なら、真実とは人が決める事になるからだ。


だが、人は事実と真実の違いに振りまわされて生きる。


永久普遍に変わらない事実が有ったとしても


それは真実とは呼べない。


そして今、やっと分かった事が有る。


私にとっての真実は、私がこれから先


おそらくは、死ぬまで探し続ける事。


それが真実だろう。


ならば真実とは存在しないのかと言う疑問にぶつかる。


だが、それは違うのだ。真実は必ず存在する


そう信じる事こそが、真実と言う意味だろう。