223の頃だったと思う。

ふと目に止まった、トーベ・ヤンソンの半生を描いたドキュメンタリー映画を、渋谷のBunkamuraの小さなシアターで見た。

彼女はムーミンの作者である。

ノルウェー映画は初めて見たが、女性同士のラブシーンや不倫のシーンもある中々大人向けな内容であった。


トーベは妻子持ちの既婚男性と関係を持つ中で、職場の女性と浮気を繰り返していた。

まさに自由気ままな人だったのだろう。

ある日、彼女の元へ不倫相手である男性が息を切らして駆け寄ってくる。


何事かと思うと、彼は「妻と離婚してきた」と嬉しそうに離婚届を広げて見せた。

「結婚しよう。ずっと君と暮らしたいと思っていた。」と彼は告げるのだった。


しかしトーべは表情を変えないまま、

「それがあなたの望みなの?」と聞いた。

その瞬間、私の目から涙がこぼれた。


結局、彼と結婚することを決めたトーべは結婚生活を「楽しもうと」したが…しばらくして心を閉ざすようになり、離婚することになったという。


私はこう思った。


男性が愛していたのは女性であるトーべか、芸術家であるトーべか、どちらだろう。


もし前者であれば、私も同じ表情で、彼に同じセリフを放ってしまうのかもしれない。


それがあなたの望みなの?って。


私は最愛の人に女性として愛されたいのか、芸術家として愛されたいのか、人生においてどちらに重きを置くだろう。