前回、一等駅という鉄道ネタやりました。一部の鉄道ファンと地元の関係者しか読まねーだろうな、と思って書いたのですが、そこそこ反響がありましたので、それにお応えして(図に乗って)更にローカルなネタやります。

現在の、えちごトキメキ鉄道(トキ鉄)の日本海ひすいラインは以前、JR北陸本線でした。そのJRが更に遡り国鉄時代の話です。北陸本線の直江津~糸魚川の中間に「能生」という町があります。(当時、新潟県西頸城郡能生町。現在は糸魚川市になっています)「のう」と読みます。能生町の玄関駅は町名の通り「能生駅」。どうでも良い情報ですけど、アルファベット表記では「NO」で日本一短い駅名とされてました(三重県の津は「TSU」なので3文字)

さて、時は1961年、今から60年ちょっと前の話。この駅を巡りある事件が起きました。当時の能生は特急どころか急行も止まらない小駅でした。そんな能生駅に今度のダイヤ改正で特急「白鳥」が停車する、という噂が町に広まりました。特急「白鳥」は当時、大阪~青森・上野(大阪~青森、大阪~上野を併結。直江津で分割)を走る長距離昼間特急。当時の特急は前回書いた一等駅クラスしか停車せず、それまで富山~直江津はノンストップでした。それが今度のダイヤ改正で能生に停車!さて、これは一体どういうことだったのでしょう。皆さん「運転停車」ってご存知ですか。単線区間での列車行き違いや機関車交換、物資補給や乗務員交代等のための旅客扱いをしない停車のことです。だから時刻表の上では通過で表記されます。当時の北陸本線能生付近は非電化単線でした。そしてちょうど能生駅で上下の「白鳥」が行き違うことになったのです。つまり「運転停車」。交通公社時刻表の上では当然通過と表記されていたのですが駅を管轄する金沢鉄道管理局が駅に掲出する時刻表に誤って上り白鳥の運転停車の発車時間を記載してしまった。これを見た町民が「おらが駅に特急が停まる」という騒ぎになったのです。さてダイヤ改正当日、町民たちは喜び勇んで駅に詰めかけました。そして待ちに待った特急白鳥が上下とも定刻通り到着。ところが下りは勿論、上りの白鳥もドアが開きません。そして旅客の乗り降りがないまま発車。詰めかけた町民たちはしばしポカーン。これが後に語られる「能生事件」です。事件だから、もっとオドロオドロしたものを想像してましたか?事件と言うより珍事ですね。今でもリアルタイムで遭遇した人いらっしゃいますかね。