一定以上の年代なら皆知ってるでしょうけど「天才バカボン」というギャグマンガがありました。テレビアニメ化もされたし、今でもいくつかのストーリーを覚えています。ある時、バカボンが靴磨きのバイトを始めました。そこに通りかかった中年のお客さん、靴を磨いてもらいながらバカボンにあれこれ身の上話を聞く。バカボンは一々ちゃんと答えるのが面倒なのか何でも「はい」とだけ返す。「両親はいないの?」なんて質問にも「はい」なんて返す。鵜吞みにしたお客さんがすっかり同情して一万円を置いていく。バカボンはこれで自転車を買いました。それを聞いたバカボンのパパ。「ワシも自転車が欲しいのだ」と自分も靴磨きを始めました。そしてお客さんが来ると、聞かれてもいない身の上話を始める。「僕には両親がいません」なんて言ってもお客さんは「その年ならしょうがねえな」とばっさり。こんな調子だから自転車を買う金額はなかなかたまりません。ところが何かのはずみで指名手配犯の検挙に協力することになり警察から金一封をもらう。でもこれで買えたのは三輪車。二輪車で颯爽と走るバカボンの後をパパが三輪車で追いかける、という落ちで終わります。

この漫画、実質このパパが主人公なんですが、この人なんでも反対に言う。「賛成の反対なのだ」とか。それこそ今でもまことしやかに言われているのが、当時お日様が本当に西から昇ると信じていた人がいたとか。あと前回の国語狂騒曲で、間違いでも皆が使えばその言葉は正しくなる、というくだりがありましたけど、この人もそういう事例を作ったのをご存じでしょうか。中華料理でお馴染みですが、皆さん「ニラレバ炒め」「レバニラ炒め」、どちらで言ってますか。元祖の中国語では「韭菜炒猪肝」なので直訳すれば前者が正解です。実際、日本でも最初は前者だけでした。で、バカボンのパパはこれが大好物。なんでも反対に言うこの人にかかると「ニラレバ」が「レバニラ」になってしまう。高級フレンチレストランで「なんでレバニラ炒めがないのだ。ワシはレバニラ炒めが食べたいのだ」と悪態ついたりします。赤塚先生的にはギャグの一環で使っただけでしょう。ところが当時の日本人にはそもそもニラレバ炒めの認知度が低くギャグだとはわからなかった。でレバニラが独り歩きしてしまったらしいです。