目玉 その六(終わり) | 親父と息子の口喧嘩

親父と息子の口喧嘩

ある親父とある息子が、社会の色々な事柄について論じます。
こんなことを考えている親子もいるのかと、ぜひぜひ少し覗いてくださいな。

何杯か重ねるうちに、俺は少々酩酊してきた。

「もう引き上げるわ。今日はこれで幕引き」

俺は少しふらつく足で立ち上がった。

「マスター。お勘定」

「いいってことよ。つけとくよ」

二つの眼窩がまた笑った。

「そうかい。ご馳走さま」

ドアを押して、通路に出た。

エレベーターに乗った時、俺は妙なことに気付いた。

地下3階のボタンが見つからないのだ。

「まあ、いいや。次に来るときは階段にしょう」

ビルを出てから、俺は独り言を呟いた。

「世間の人たちはなぜ気づかないんだろう。目玉なんか無くても物は見えるんだ。目玉なんて所詮飾り物だ」

俺は眼鏡越しに、右目をぽんぽんとたたいた。

それから、身震いを一つして歩き始めた。